第2話 僕は、ゲームを始める


 僕は目を覚ます。


 

 目覚めるとそこは、見知らぬ部屋だった。


 僕は見覚えの無い、部屋で寝ていた。


 


 ここが、ゲームの世界なのか────?

 

 試しに起き上がってみる。

 

 上体を起こし、ベットから出る……。

 そのまま伸びをしたり、前屈したりする。



 ……。


 …………。



 ────ちゃんと、体は動いた。


 身体を触ってみよう。

 頬を叩いたり、抓ったりする。


 感触や、痛みまでちゃんとある。



 これが────

 最新のゲームなんだ……。


 

 凄いな、まるで現実の様だ。



 

 部屋に備え付けられていた、鏡を見みる。


 鏡には、僕が映っている。

 見た目は、現実の僕と変わらない。


 ゲームなんだから見た目を選べると思っていたが、そのままの姿だった。



 ────どうせなら、もっと逞しくて、カッコよくなりたかったのだが……。


 見た目に関しては、説明書に記載がなかった。

 このゲームは、こういう仕様なのだろう。


 仕方ない。




 見た目の変更は諦めて、僕はゲームを始めることにした。


 説明書にあった、ストーリーを思い出す。




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ここは異世界、レイグリード。 


 レフィールド王国は、滅亡の危機に瀕していた。

 魔物を従えた、魔王軍に侵略されているのだ。


 魔王はこの世界にいくつものダンジョンを発生させ、そこからあふれ出た魔物が国中を荒らし回っている。



 魔王軍に対抗する為に、レフィールド王国の姫ティファーナ・レイル・レフィールドが、勇者召喚の儀を執り行い、異世界から救国の勇者を呼び出すことになった。




 彼女は国の窮地を救う為、異世界から救国の勇者を召喚する。


「邪悪を打ち払う力を秘めし勇者よ! ────古よりの盟約に従い、我らの元へと、その勇ましい姿を現したまえ!!」


 ティファーナ姫は、高らかに呪文を唱えた。


 彼女は召喚魔法の使い手なのだ。


 姫の目の前に、巨大な魔法陣が浮かび上がる。



 …………。


 ……。




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 ────というのがこのゲームの冒頭で、プレイヤーは召喚された『勇者候補』ということになる。


 プレイヤーはお姫様に頼まれて、この国を救う旅に出る。

 ダンジョンを攻略し、魔王を討伐するのがプレイヤーの目的だ。



 ゲームのスタートは、村の宿屋の一室から始まる。



 プレイヤーはお姫様に召喚され、王様に謁見し、最初のダンジョンを攻略する為に、ダンジョン周辺の村へと、お姫様の魔法で転移した。


 召喚されるところから、村に転移する過程はカットされていた。


 




 僕は現在、村の宿屋に泊っている。

  

 ────この『宿屋の部屋』というのが、プレイヤーにとってのセーフゾーンになる。ここは、魔物やNPC、それに他のプレイヤーから攻撃されることのない、安全地帯であり、自分のステータスのチェックや装備の変更を行うことが出来る。





 ────さて、ゲーム開始だ。

 まずは、自分のステータスをチェックしてみる。


「ステータス・オープン」


 僕の目の前に、半透明のウィンドウが表示された。





 このゲームは現実の僕の情報をスキャンして、キャラクターの能力として、ステータスにされているらしい。


 これが、僕のステータスか────



 …………。


 ……。




 こういうのを見ていると、ちょっとテンションが上がる。



 『特質系』とか『時空間能力者』とか、なんかカッコいい単語が並んでいた。

 魔力属性が『闇』というのもカッコいいな。



 柄にもなく、ちょっとワクワクしてしまう。


 所持金の金貨十枚というのは、日本円にして十万円くらいの価値らしい。


 

 最後にあった『ボーナスポイント』というのは、自分のステータスの好きな項目に割り振ることが出来る代物の様だ。


 これで自分の弱点を補ったり、強みをさらに強化したり出来る。



 ……まあ、それは後でいいか。




 まずは、宿の外に出て、武器と防具を揃えよう。


 それからボーナスポイントを、割り振ることにする。




 

 まずは武器屋────


 武器屋は宿屋から、離れた位置にある。

 離れているといっても、狭い村なので、歩けば五分くらいで着く。


 武器屋にあるのは剣や弓、槍に杖といった装備だった。


 どれも金貨三枚くらいはする。

 


 僕のステータスは明らかに魔法使い系なので、装備を買うなら杖だろう。


 杖は金貨二枚だった。



 購入リストに入れて、次を見に行く。

 武器屋の向かいにある防具屋────



 防具は鎧に盾に兜にと、定番の装備が揃っている。

 

 鎧は金貨五枚、盾と兜は三枚だった。


 買うなら盾かな……。



 

 僕は盾を買い物リストに入れて、道具屋に向かう。



 道具屋で売られているのは、回復薬にサポート系の道具に、アクセサリーだった。

 その中で、僕の目に留まったのは、『魔導士の指輪』……。



 ゲーム世界なだけあって、僕の意識がそのアイテムに向かうと、半透明のウィンドウが現れて、補足説明が表示される。



 魔導士の指輪────

 魔力操作能力が上昇する効果のある指輪。

 魔法を効率的に扱えるようになり、威力も上がる。


 店頭販売価格は、金貨七枚。



 僕はこの指輪に心惹かれた。


 だが、少し迷う。

 ……金貨七枚は高い。


 ────だが、購入することにした。



 

 

 これはゲームだ。


 お金はまたすぐに溜まるだろうし、欲しいものを欲しい時に買っておいた方が良い。────説明書によると、このゲーム世界の店の商品は、常に在庫がある訳ではないらしいのだ。


 レアアイテムほど、入荷は不安定になる。



 金貨七枚を支払い、魔導士の指輪を購入することにした。


 僕が金貨を取り出し、店の人に渡す。


「まいどあり!」

 


 これで僕の所持金は、金貨三枚になった。

 



 購入した商品はアイテムボックスに収納されているらしく、受け取った瞬間に消えた。


 


 残りの金貨三枚で、盾を購入して宿に帰る。


 部屋に入り、ベットに腰かける。

 ────よし、これからボーナスポイントの割り振りをしよう。







 *************************


 名前    タナカ ジロウ           

 

 職業      冒険者Lv01 魔法使いLv01                       

 戦闘タイプ     特質系 時空間能力者

 魔力属性        闇  

 


 最大HP        40

 最大MP       670


 凌力         28

 体力         30

 魔力        830

 俊敏         26

 命中         55


 精神力        25

 運          70

 魅力         15       



 装備

 旅人の服 旅人の靴 旅人のマント 勇者のネックレス


 スキル

 なし


 魔法

 なし


 特技

 なし


 所持金

 金貨十枚 


 ボーナスポイント

 300


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【ラスト・パラダイス】 一人ぼっちのダンジョン攻略 猫野 にくきゅう @gasinnsyoutann

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