TIPS3

電網世界における[価値]とはつまり、人の承認欲求を元に換算される新しい功績指数だった。


それまでの旧世界における全てがアーカイブ化され[資本]を喪失した新世界において、人類がその満たされたあとの退屈から飛び出して欲望を見出すのに、承認欲求というお手軽で際限のない都合のいい機能が幅を効かすようになるまでそうはかからなかった。


おそらくは公社の想定通りに進んだシナリオだったのだろう。


あまりにもスムーズに成立した個人価値総数[ハイスコア]、創世後に創造された文化の保護複製阻止システム[コピーガード]、大々的に開かれた[文化祭フェスティバル]と言う名の行動指針のモデルケース展覧会。

人々は自ずから動きだして[価値]を得るための行動を始めた。


例えばアイドル、旧態依然とした大メディアはすでに無く、しかしウェブでは広がりすぎて偶像ではいられない、だからこそ魂魄を模造して個人ファンその者達に配る、貴方のためだけ・・・・・・・の[アイドル偶像]が産まれた。


もしくはクリエイター、[資本]や[人体]による制限をクリアされたクリエイター達は、体感時間を加速させ、運動機能を改造し、自らの情熱が赴くまま以前前世の職場を超えたブラックな制作環境を造りだし新技術を産み出していった。


そしてステーツマン、最早そのサーバー容量に対して総ユーザーが一人一つ地球規模のエリアを所持したとしても余りある電網世界において、誰しもが、望むなら、一つの世界を造る余裕があったからこそそれを行えるような人材こそ希少だった。彼らもまた望むまま新しい街を、都市を、場合によっては国を、[エリア]を造りだした。


それらを例において他に諸々と、[スコア]を得るため、[承認]されるための活動が人類のタスクに置き換わり、人々は次第に資本を基盤とする旧世界を忘却していった。

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