第3話私の正体は‥‥ 後編

カツン、カツン、カツン、

久しぶりに足音が聞こえた。


「お!まだ生きてるのか?もう1ヶ月、水も食事もないのに。ハッハッハッすごいな!本物の勇者わ!

あ、そうだ!もう魔族と魔物はこの世界にはもういないぞ!俺たちが殺したからな!これからは英雄の俺が王になり他国を攻め滅ぼし世界の王になるのだ!あとはお前を殺して俺が本物の勇者になる。勇者で王様なんて最高だろ!今の俺なら死にそうなお前を殺せるだろうし。やっと俺の手で殺せるよ勇者!」

 王子は牢を開け私に聖剣を振り下ろした。

「カーン!」

 聖剣が弾き飛ばされたカラン、カラン

 「何をした勇者!まだそんな力が残ってるのか!?クソ!しょうがない、このまま牢にと‥グハァ」

 勇者は血を吐き出した。

『ふっふっふ!ざまぁないね!王子様。私はこの時をずっ〜と待ってたんだよ!我慢して我慢して我慢してずっと待ってたんだ。牢に王子が来る瞬間をね!』

 私は聖剣を手に取り王子の腹をグリグリ刺し念和で喋りかけた。


「な‥ぜ‥弱体化‥してるはず‥なの‥に」

『バカな王子に教えてあげるわ!私に神託がおりたのよ。王子がくるまで待てと。だから弱体化している間ずっと少しずつ力を溜めてたのよ!お前を殺すためにね。今はバカ王子からエナジードレインしてるから完全回復したわ、ありがとう!あと2日遅ければ私死んでたわね!フッフッフ、もう少し遅くくれば良かったのにね王子』

 私は聖剣を3回振り下ろした。

「うぎゃーーー!」

 王子の両足、右手を切り落とし、切り口から血飛沫があがり私は返り血を浴びた!その姿はまるで‥‥



『フッフッフいい声で鳴くのね王子!はぁ、王子の言った通り絶望の顔は最高ね!我慢したかいがあったわ!』


「あ、あ、お前は死に神なのか‥‥こ、殺さないでくれ!何でも‥‥」 ボトン!

 王子は次の言葉を言えないまま首を簡単に切り落とされた。

 アリスは聖剣を大鎌に変形させていた。返り血を浴び肩に鎌を構えた姿はまさに死に神だった。

 アリスはもう前のアリスではなくなっていた。あくを裁く悪の執行人に。悪と感じたものは全て滅ぼす死に神に‥‥


 さてこの世界には善ぜんの人間はいるのだろうか?いなければこの世界の人間は全て滅びるだろう。


『楽しみだわ!我慢したかいがあったわね!これから全ての悪がこの手で殺せるんだから悪の絶望の顔が早く見たいわ』


 王子の首を刎ねた顔は絶望に染まっていたままだった。それを手土産に王の前まで持っていくため牢からでた。


 この日王国は滅びた。誰1人生き残った者はいなかった‥‥老若男女全て。


「次はどの国にしようかしら!」


 

ーーーーーーーーーーーー

結局この世界の生き残りは悪しかいなく全ての人間は滅ぼされた。


「はあ、もうこれで私の仕事は終わりね。最後の悪の人間の私を殺して終わるわ!さようなら」

 聖剣を自分の胸に刺して死んだ



ーーーーーーーー


「ご苦労様ですアリス。あなたのおかげでこの世界は救われたわ」


「あれ?私さっき死んだのに‥‥」

私は生きてるの?ここはどこ?周りは真っ白い世界が広がっていた。

「ここは私の神界よ!あなたは死んで魂だけがここにいるのよ」


神気を帯びた人形のような美しい人がきっと私に神託した神様なんだらろう。

「そうよ!私があなたに神託を送ったのよ!でもちゃんと詳しく送れなくてごめんね。まだ神様になりたての新参者だから」

「え!私の思考が読まれてる!」

 自分の思考が筒抜けだなんて恥ずかしい‥

「フッフッフ、かわいいわね!どう?この神界の神気を浴びて精神は回復したかしら」


「あ、ほんとだ!心が軽くなってる!」

「よかったわ!あなたの心が壊れてたから心配してたのよ。間に合って良かったわ」

「神様、私はどうなるのでしょうか?」

「そうね、あなたには2つの選択肢があるわ!1つ目はあなたの世界で死んでしまった善の人間、魔族、魔物たちと一緒にあの滅んだ世界に転生してもらうことかな。もう悪はいないから幸せな世界になるわ!2つ目は色んな世界に転生してもらうことよ」


「私の家族は転生するんですか?」

「そうよ!あなたの家族は善ぜんの心を持ってるから転生させられるわ!あなたも一緒に転生したらまた家族達一緒に暮らしていけるわよ」


「本当ですか!?あぁ、よかった!あのう、2つ目の違う世界のこと聞いていいですか?」

 私は家族が転生することを知って安心した。だから2つ目の選択肢が気になった。


「またあなたに色んな世界を救ってほしいの。どの世界も同じで善がなくなって悪になりかけてるの。全て悪になってしまうと魔神が誕生しまうのよ。魔神は私達神に匹敵する力があるから誕生させてはダメなの!もし誕生したらこの神界の危機になってしまうわ!だから魔神が復活する前に悪を滅ぼして欲しいのあなたに‥‥駄目かしら?」

 

 すごく悩んだ‥‥また家族と一緒に過ごせることを‥‥でも私みたいな悲しい思いをさせたくない思いと悪を私の手で滅ぼしたいと思う気持ちがある。あの悪の絶望した顔が忘れられい!あれをもう一度体験したい!


「この神界の神気を浴びてもあなたは完全には元に戻らなかったわね。ごめんなさい」


「あ!そうだ思考読まれるんだった!神様違うんです!たぶん私は元々こうなんです!だから気にしないでください!‥‥私決めました、別の世界に行きます!家族と一緒に転生もいいのですが、私は悪を裁く方を選びます!家族はもう善の世界で幸せになる事はわかりましたので、今度は違う世界を幸せにしてきます」


「フフフ、じゃあお願いするわね!次の世界は魔法、魔物、魔族のいない世界だけどあなたは今まで通り魔法も使えるから安心して。でも無理矢理あちらの世界に介入するからあなたに制限がかかってしまうのよ。その世界に行けば何が制限を受けているかわかるから解除してね!1人じゃ心許ないから特別に相棒もつけてあげるわ!転生してからのおたのしみよ!」

「相棒!?もしかして‥‥」

「じゃあ、そこの魔法陣の上に乗って!‥じゃあいくわよ!"転生転移」


 光の柱が上がって消えた。

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