星の導く絶対霊域には

夢時間

第1話 星の恵

XXXX年、人類は進化した。

人類には、【能力】とそれに見合う【レベル】がもたらされた。

人々は、その力を星恵せいえんと名付けた。

___その力は、時に世界を揺るがし、

___その力は、時に人をも揺るがした。

人類最初に星恵せいえんの力を授かった者、その子々孫々を星王せいおうと呼んだ。

________________________________

「授業……早く終わらないかなぁ…」

銀を帯びた淡い空色の長い髪に、特徴的な灰色の瞳をした少女はぼそりとつぶやいた。

童顔…というほどではないが、16という歳に見合わない、少し幼さを残した顔をした美少女、

__レイラ・オーガスティン。

レイラは机に差し込んでいる光に向けて「まぶしい」と呟いた。

すると。


リーン リーン


授業の終わりの合図に、涼しげな鈴のが響いた。

大きな音なのにうるさくない、むしろ心地よいほどの鈴のおと

授業終わりの教室はすこしがやがやとしていた。

「レイラ!!」

明るい、可愛らしい声がレイラの耳に響いた。

「……アルカ、相変わらずうるさいね」

「そうかな?これでもだいぶ抑えてるんだよ?」

アルカ、と呼ばれる少女は、紅色に似た、肩につくかつかないかほどの長さしかない深紅の髪に、金色こんじきの目を爛々らんらんと輝かせていた。

「って違ぁう!!レイラ、先生の話ちゃんと聞いてた?」

バン!!

とアルカがレイラの机を強く叩いた。

「……アルカ?」

そううレイラの声色には、限りなく憤怒ふんぬが混じっていた。

「あ、ごめん。ところで、今度、星恵せいえんの実技テストがあるんだって!」

「……実技テスト?」

「うん。…あ、そっか。レイラはDクラスだったか…」

「あ…うん。Aクラスのアルカにはあるんだ?」

「うん!がんばるね!」

そう。

レイラのクラスはDクラス。『危険』と判断された生徒はDクラスに移動させられる。

「そういえばアルカの星恵って何なの?」

「私のはね~【発散】!…うーん…そうだな~。みてもらった方が絶対はやいと思うから…そこの君!」

「えっ?」

アルカは周りを見渡し、薄い赤茶色に、灰色のグラデーションをした髪の毛をした少年を呼んだ。

「えっと…」

「ちょっと私に向かって星恵せいえんを使ってくれない?」

「え…わ、分かりました…」

少年は少し戸惑いながらも、集中するために息を深めに吐いて。


__音確 の楽園にはおんしか無き


リイイイィィィィィン…………

「うわっ?!」

教室が波打っているように見えるほど、強い音の波動が教室に響いた。涼しく、聞いていて心地よいはずの鈴が、大きく、激しくっ鳴っている。

「______……【発散】!」

アルカがそう叫ぶと、激しく鳴っていたはずの音が消えていた。

「よし、これで廊下に出てみて」

「え、うん…」

レイラは、廊下に足を一歩踏み出した瞬間に、さっきまで鳴っていたはずの鈴の音が響いていた。

「あれ?」

「レイラ!教室にもどってきて!」

アルカが言うように、レイラもそう動くと、教室に足を踏み入れた瞬間に、なんの音沙汰もなかったかのように、教室はまたがやがやとしていた。

「ふふふ!どう?私に向けられた不可視エネルギー…まぁいわゆる星恵せいえんエネルギーを別の場所に発散できるんだ。」

「へぇ~…。それって物理エネルギーはどうなの?星恵せいえんエネルギーだけなの?」

「えっと…それは」


リーン リーン


アルカが口に出した瞬間に、自由時間終了の鈴の音が鳴った。

「やっべ!ごめんねレイラ!また後でね!」

そう言い、アルカは、馬のような速さで、駆けていった。

________________________________

「あの…」

授業中、隣から話しかけられ、少し驚く。

「ん?」

薄い赤茶色に灰色のグラデーションをした髪の毛に、後ろ髪を鈴の着いた藤色のリボンで縛っている、紺色の瞳をした少年。

只でさえ他の女子より男子に関心の薄いレイラでも、ごくりと息を呑むほどの美貌びぼうに、男子とは思えないボーイソプラノの声。

「あの…そっちの方に僕の鈴が落ちてない?さっき落としちゃって…」

レイラがパッと周りを見渡すと、金色こんじきに少し鈍色にびいろが加わったような、不思議な鈴があるのが見えた。

レイラはひょいっと鈴を拾い上げ、「これ?」と軽く囁いた。

「うん…。ありがとう。僕の大事なものなんだ。」

「そうなの?」

「うん。この鈴、昔、僕のお兄ちゃんがくれたんだけど…。どういうことか、これがないと、星恵せいえんが使えないんだ。」

「え?!それは大事だね…」

「そういえば…名前を聞いてもいい?僕はノエル。ノエル・アリアリウム。」

「私はレイラ・オーガスティン。よろしくね。」

ノエルが軽く微笑んだ後、レイラも微笑み返す。

レイラは、さっきアルカに星恵せいえんを使ってくれた少年がノエルだということに気づき、「さっきはありがとう」と軽く一礼し、授業に集中した。

___ノエルの持っている鈴が、チラリと薄紫色を覗かせた。

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