文章トレーニング(仮)

@jdmp88

『力を込めて』

 がしゃん。


 自転車が地面にぶつかる音と共に、男の子が転んで手をついた。私がこの公園についてからさほど時間は経っていないが、そろそろ両手の指では足りないくらい同じ光景を見ていた。


「あとちょっとなんだけどな」


 男の子には聞こえていないと分かりつつ、私は独りごちた。

見ればやはり、地面から足を離すのが怖いのだろう、おっかなびっくりといった感じでペダルを漕ぎ出しては転倒する。


「ああ、おしい!」


 ただ今回は少しだけ違った。彼なりに考えて挑んでいるのだろう、転ぶ前にハンドルを動かし体を反らせ、どうにかしてバランスを取ろうとしていた。




「よし、もういいか」


 少しの休憩のつもりが、思いのほか長くなってしまった。

冷ました体をほぐすように、軽くストレッチをしてランニングの準備をする。


(あそこまでできるなら最後に必要なのは思いきりだろうし、すぐに乗れるようになるかもね)


 自転車の練習をする男の子を背にそう考えながら、公園の出口まで歩いて行く。


 がんばれ。心の中でエールを送っ私はて走り出した。

その一歩目は、いつもより力強く感じた。


2024/10/07

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