異世界ニート ~今度転生したら本気出す~
@herudaii
第1話
異世界に来てから1カ月がたった今、俺はNEETだった。
寝て起きたら布団とともにこの世界に転生。特に神様的な存在との会話もなく、特別な能力も与えられなかった。というのも、異世界転生あるあるなのだ。まず不運な交通事故や事件に巻き込まれ、亡くなって異世界へ転生。そして超越者との会話を得て特別な力をくれるのがお決まりなのだ。まあ、絶対そうかと言われたらそうでもないけれど、それが王道なのだ(俺の中での王道)。だた今の内容はフィクションでの場合の話。漫画やアニメでの話なのだ。なので実際は以外とシビアであった。
「奇跡だ、なんだかんだ生きてるし俺」
1か月の間、飲まず食わず、とはないものの、森の恵みや湧き水などを飲み食いして生きている。現世では特に目立った生き方はしておらず平凡な人間だった。そんな俺が1ヵ月の間、見ず知らずの異世界で生き延びていることは奇跡なのだ。
目が覚めた時は当然慌てたし焦った。ふかふかのお布団から起き上がると森の中だったからだ。嬉しいことにこんな悪戯をするような身内や知り合いは俺にはいなかった。最初は二度寝して考えるのをやめていた。正直頭がどうにかなったと思うほうが楽だっただ。そして目が覚めると、森の中だった。日光が俺を起きろと照らし続ける。頬をつねってみたら普通に痛かった。そしてもう一度寝ることにした。結果は変わらなかったけれどその後も何度か試してみたが現実は変わらなかった。
俺が動き出したのは汚い話、尿意に我慢できなくなったからだった。なるべく布団のそばを離れたくなかったが、そうもいってられなかった。追い込まれてから行動するタイプの人間筆頭な俺は恐る恐る用を足せる場所を素早く見つけて済ませた。そのときカサカサと草叢から音がした。元気な俺ならポ○モンネタの一つでもつぶやくこともあったかもしれないが、あいにく声を叫ぶしか能がなかった。
びっくりして叫んで、腰が抜けてしまっていた俺は、数分間フリーズしていた。用を済ませたあとでよかったと思う余裕が出てきてから、ゆっくりと立ち上がりそっと草叢の音の鳴った方へ歩いてみると、再び俺は叫んでいた。
「キノコが動物を食っている・・・・?」
俺の記憶が正しけれは現世のキノコにはギザギザな歯はなく、小動物を食べたりはしなかったはずだ。しかし目の前でキノコがもぐもぐおいしそうに獲物を食べているのだ。ここは現世ではない、というのを感じた。
幸いにもキノコは地中に埋まっており動いて狩りには来ない。ただ一点つらいことにとてつもない良い匂いがする点だ。肉食キノコは、動けない分香りで動物を引き寄せている様子だった。というのもこのキノコからはショートケーキのような芳潤な甘い香りがした。
「はあ、お腹空いたなぁ」
腹が減っては戦は出来ぬというが特に戦ごとをする予定もないのでお腹を空かせたまま布団まで戻ることにした。戻る途中に湧き水がある川を見つけた。行きは周りを見る余裕がなかったが、おかげで水の心配がなくなった。非常に澄んだ水で川の中を覗くとメダカサイズの小魚も見つけた。
「水がうまい。水ってうまいんだなぁ」
そんな感想を俺はつぶやいていた。ちなみに毎日挑戦しているが、1か月間、一度も小魚を捕まえることはできてない。ジブン、不器用ですから。
異世界転生してから3日目の朝、限界に達した。
「お腹が・・・空いた」
錯乱しそうなほどお腹が空いた。寝ようにもお腹が空きすぎて寝られない。怖くて寝られないという理由も最初はあったが、今は空腹のせいで全く寝付けない。他のことが全く考えられない。
「あいつを試すしかないか」
あいつ、とは先日の肉食キノコのことである。あのケーキのような香りのせいで、今の空腹があると言える。キノコというだけあって毒キノコということもある。また小動物を餌にするような獰猛な生き物なので注意が必要。まあ結論からいうと長めの枝でつついたらもぎ取れた。3時間も枝でつつくのに時間がかかったのは俺が慎重な性格だからだろう。ビビりとかではない。ただ、ことわざいうところの石橋を叩いて壊すタイプです。
イチかバチか、肉食キノコを試した。
「うんまぁああああああ」
上記通りの感想なわけだが、先述の香りの通りの味がした。端的にいうとスイーツキノコだった。5つ星レベル。行ったことないけど。
「これならいくらでも食えるぞ」
幸いにもこの肉食キノコはたくさん見つけている。最初はビビり散らかしたヘンテコ生物だったが今となってはお菓子にしか見えない。
と、まあこんな生活をダラダラと続け今となる。まじでこれ以上に何も特筆することがない。コピペな生活だ。
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