第21話


「へぇ~笑眞ちゃんていうんだ。髪綺麗だね。地毛?」


「、、、近寄らないでください。」


「えーーー冷てぇ~」


「おいっ、やめろって。嫌がってんじゃん」




、、、、なぜこんなことになったのか、


遡ること1時間前、


今日は先輩がバイトということで、1人で帰ろうとしていると


去年同じクラスで仲良くなったリリカと会い、


暇ならカフェに行こうとなり


2人で駅前にあるカフェに来ていた。


そしてリリカの恋バナに耳を傾けていた。


「この前、S高の人たちと合コンしたんだけどさ、


1人めっちゃタイプの人がいて、今連絡とってるんだけど


なんか距離の詰め方がわかんなくって、、、」


「へぇ、あのごり押しリリカがねぇ。奥手な人なんだ。」


「もうタイプすぎて、ぐいぐい行けないのよ~」


「うーーん、とりあえず遊びに誘いまくるとか?」


「それはもうやって、「あれ?リリカちゃん?」


 え!ショウくん?!///」


なんとそこに噂のショウくんとやらが登場。


そして、暇なら一緒にどうかというショウくんの提案により


現在、S高の男3人と珈琲を飲んでいる。


そして冒頭にいたる。


ショウ君は止めに入ってくれた人だ。


どうやら、リリカが心を掴まれているだけあって


気遣いもできる優男であった。


が、その友達がなかなかしつこい。


「え、てかエマちゃんってこっちの高校でも有名なんよ。


まじ芸能人に会った気分!」


「有名?」


「めっちゃかわいい子がいるって去年噂になってた。


でもめちゃくちゃイケメンの桃先輩と付き合ってるんだよね?


ぶっちゃけどうなの?彼氏がイケメンすぎると色々大変なんじゃない?」


「はぁ、大変ではありますけど別に困ってはいません。」


「え~そうなんだ。疲れたりしないの?


手頃そうな男の方が楽でいいなって思ったりしない?


ほら、俺とか!なんちゃって」


「はぁ、、、遠慮します。」


先程からこのようなやりとりばかり。


リリカの方を盗み見れば、ショウ君と仲良くおしゃべりに夢中。


空気を壊すのは申し訳ないが、我慢の限界である。


「ごめん。このあと用事あるから先に帰るね。」


「え!そうなの?了解!また明日ね」


「えーーーエマちゃん帰っちゃうの?


せめて最後に連絡先教えてよ‼」


「お前、いいかげんにしろって、、」


「彼氏と連絡とるので手一杯なので、ごめんなさい。」


そう笑みを乗せて断りを入れれば


赤面して黙り込む一同。


リリカに目配せをして席を立つ。




「え、クール美女の笑顔の破壊力やべぇ、、、」


「それな。ていうかさらっと惚気られたな。」


「まぁ、あれはきっぱり諦めろ。」


「エマと先輩はラブラブなので入り込む隙はないですよ。」


そんな会話が繰り広げられていた。





次の日、昼休みに入ったとき


廊下が何事かというほどざわめきだし、


廊下に視線を送れば、


約束していないはずの先輩が教室に入ってきていた。


「?おはようございま「来て。」、、?はい。」


一応お弁当を持って先輩に付いていく。


そして体育館裏に着くと、無言だった先輩が振り返り


どこか不安そうな瞳と目が合う。


「笑眞、昨日何してたの?」


「昨日?友達とカフェに行って帰りましたけど」


「友達?いつの間にS高の友達ができたの?」


「S高?あぁ、それは友達の知り合いです。


成り行きで一緒に珈琲飲みましたけど、すぐ帰りましたよ。」


「友達の知り合いに髪を触らせんの?」


そう言って1枚の写真を見せられた。


男の手が私の髪を掬っている写真。


あぁ、あのしつこい人だ。


「え?なんでこんな写真持ってるんですか?」


「今そんなことどうでもいい。触らせたの?髪」


「、、、すみません。触られました。でもすぐ避けましたよ。」


「、、、、、」


「ごめんなさい。気をつけます。」


「、、、、やだ。」


どうやら拗ねてしまった様子。


袖を引っ張ってもこちらを向いてくれない。


「ごめんなさい、お詫びに私のウインナーあげますから。」


「、、、、」


だめだ。全然見向きもしない。


最終手段。やったことはないけど。






「、、ごめんね、モモくん。」


たまにため口が出ることはあっても


ちゃんとため口で話したことはないし


モモ君なんて呼んだことはない。


「、、、、」


え、無反応。


これは手厳しい。どうしたものかと悩んでいれば


いつの間にか振り返っていた先輩。


右耳のピアスをいじりながら、見たことない顔をしている。


やっとこっちを向いてくれた先輩に背伸びをして


初めて自分から口づけた。


驚いて一瞬動きを止めた先輩は、


襟足を掻きながら、視線を外し


困り顔で背を曲げてくるものだから


目を閉じて口づけを受け入れた。


先輩、知ってますか?


困ると右耳のピアスをいじる癖。


照れると襟足を掻く癖。


あまり感情を口にしない先輩を理解するために


見つけた先輩の癖。


機嫌が直った様で、油断していると


「次はないから。」


と、ほっぺを食べられた。





”桃李先輩は彼女のため口に弱い”

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