第5話 情熱的な愛〜ヒガンバナ編〜①

 ヒガンバナにはプロテア様しかいないのに、どうしてプロテア様にはいっぱい花姫がいるんだろう。

 嫌だよ。他の子を見ないで。

 ヒガンバナだけを見ていて。

 アイシテルノアナタダケヲーー。



「ーー俺はヒガンバナ、好きだけどな」

「ヒガンバナ、不吉だって言われる。毒だって、ある」

「ヒガンバナはきれいだよ。赤い花が秋の澄んだ空によく映える。毒だって、墓の遺体を動物から守ってくれたし、非常食にもなるし、人に寄り添ってくれた花じゃないかな?」

「……プロテア様はヒガンバナのこと、怖くない……?」

「怖くないよ。すごくきれいだ」



「プロテア様っ!ずっと待ってたよ!会いたかった!」


 ヒガンバナが俺の胸に飛び込んでくる。

 黒の長い髪に赤い瞳。

 赤い着物が印象的な美少女だ。


「わわ、お人形さまみたいでかわいい!」

「!?その、姿……プロテア様にそっくり、だね…………ダレノコ?」


 樹姫を見て殺気立つヒガンバナにグラジオラスがひっと怯える。


「ほらほら、いつもの言葉は言わないの?プロテア様との愛の結ーー」

「きききき、桔梗さん!?なななな、何を言ってるのかなぁ!?」

「おはよう、ヒガンバナ。その子はグラジオラスの娘だよ」

「グラジオラスの娘……?」

「そう。そっくりだろう?」

「……うん。似てる」

「で、父親は転生先の馬の骨も知れぬ男だ」

「……なるほど。グラジオラスはプロテア様を諦めたのね」

「諦めてなんかないよ!?私、プロテア様を愛してるからね!?」

「……他の男に身体を許しておいて、不潔。穢らわしい。売女」


 言葉のトゲがグラジオラスに突き刺さる。


「さっすが、ヒガンバナ」


 クレマチスはクスクスと笑っている。


「そんなにグラジオラスを悪く言わないでやって?転生して、姉として俺を守ってくれていたんだ」

「……姉……?ということは、あの子はプロテア様とチガツナガッテイル……?」


 ゆらりとヒガンバナがグラジオラスに襲いかかる。


「……失せろ、グラジオラス」







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