第4話 策略家クレマチス編⑤
「ーー4月の花姫、ポピー。5月の花姫、アオバラ。6月の花姫、クロユリ(本来はユリ。現在行方不明)、7月の花姫、桔梗。8月の花姫、ひまわり。9月の花姫、ヒガンバナ。10月の花姫、グラジオラス。11月の花姫、コスモス。12月の花姫、シクラメン。1月の花姫、パンジー。2月の花姫、梅。3月の花姫、クレマチス。……ざっと見た感じ、裏切り者の可能性を感じるのはふたり、かな?」
「誰か聞かせてもらえる?」
「……うん。その前にひとつ聞かせて。花の色が変わることはある?」
「……さすが鋭い。そこはあると私は考えてるよ」
「……なら、ひとり追加かな」
これはクレマチスと樹姫の会話だ。
「……わたしが怪しいと思うのはアオバラ、クロユリ。そしてーー」
「「ポピー」」
ふたりの声がハモる。
やっぱりとふたりは顔を見合わせる。
「ポピーの何が引っかかった?」
「……花言葉。白いポピーの花言葉は“眠り”だから、お兄ちゃんの危機に関係してくるの」
「さすが花言葉もよく知ってるね。熊もトラックの運転手も眠らされて直樹を襲った、だよね?」
「うん。でも、ポピーは裏切るような花姫なの?」
「いや、花姫は全員プロテア様を愛してる。だから考えられるのは何者かに操られている可能性だね。その可能性はクロユリが示唆してる。私はユリが色を変えられてクロユリになったと思っているよ」
「一体、誰がユリをクロユリにしたの?」
「みんなはルージュだと思っているが、私は違うと思っている。ルージュはプロテア様と対立していたが、そこまでの技量はないと思っている。一介の騎士でしかないしな」
「……正体不明、か。なら、下手にポピーは起こせないね」
「見解一致だな。こんな有能な助手ができるなんて、嬉しい誤算だ。君が私たちの運命を変える鍵になるかもしれないな」
そうなれたら嬉しいなと樹姫は笑っていた。
☆
「ーークレマチスっ!匿ってくれ!」
「おやおや、モテモテだねぇ」
くすくすと笑うクレマチスに誰のせいだと文句を言いかけた俺だったが、あまりに優しい顔をしていたのでその勢いは削がれてしまった。
「……機嫌がいいんだな、クレマチス」
「そりゃそうだよ。同類に出会えたのもあるけど、最期の3人の次に起こしてくれたのが私だと知ったら嬉しくもなるさ。あぁ、私は大好きな人に必要とされてるんだなって、さ」
ぎゅっとクレマチスに俺は抱き締められる。
「ーーもう絶対に死なせはしないから。私は戦う力はさほどないけど、策略でプロテア様を明るい未来に導いてみせるよ」
恋の決着をつけるのは未来を勝ち取ってからでいい。
次こそはクロユリに負けないんだから。
「ーーうん。頼りにしてるよ、クレマチス」
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