第4話 策略家クレマチス編④
「ーー無理して子どもらしく振る舞わないでいいよ、樹姫」
「……どうしてわかったの?」
「そうだね。私と同じだからだよ。君はギフテッドって知っているかい?」
首を縦にふる樹姫にクレマチスはふわりと笑いかける。
「君も私と同じギフテッドだよ。間違いなく天才だ。君はどこまで私たちのことを知っているのかな?」
「わたしはまだ何も知らないの。わかるのはお兄ちゃんが生まれ変わりで、ママがお兄ちゃんを好きだってことだけ」
「じゃあ、私が花姫とプロテア様について説明しよう。ぜひ、樹姫が思うことを聞かせてくれ」
☆
「大丈夫よ。クレマチスは頭が良さ過ぎてあたしたちには理解が追いつかないけど、優しい人だから」
「桔梗とクレマチスは仲が良いのか悪いのかよくわからないね」
「クレマチスは紫かぶりするから、近くに寄るなって言ってくるけど、あたしは見かけたらそばに寄っていってたわ。文句は言うけれど追い返すことはしないのよ、クレマチスは。あたしは頭は良くないけどクレマチスが寂しさを抱えているのはわかるのよ。天才は孤独だとよく言ったものよね」
「じゃあ、樹姫みたいな子に出会えたのは嬉しいのかな?」
「嬉しいと思うよ。たぶん樹姫にとっても良い出会いなんじゃないかな」
「……賢い子だとは思っていたけど、クレマチスが認めるレベルだとは思ってなかったわ」
「そりゃ、グラジオラスには甘えるから子どもにしか見えないでしょ」
桔梗の言葉にクロユリも頷いている。
「グラジオラスはちゃんと“お母さん”をしてたよ」
「ママが大好き過ぎて異世界にまで一緒に来ちゃったぐらいだしね」
「……みんな、ありがとう」
グラジオラスがふわりと微笑む。
「……あれ?俺のことを試すみたいに言ってたのに、忘れられてる……?」
「忘れてなんかないさ。急がば回れという言葉があるだろう?」
樹姫を伴って、クレマチスが顔を出す。
「頭脳なんて最初から気にしていないんだよ。頭脳は私が持っているんだからな。私はプロテア様の人間性を気に入って一緒にいるんだ。最期の花姫を引き連れて来た時点で“合格”なんだよ」
ぐいとクレマチスが俺の服を引っ張り、キスをする。
皆が驚き、時が止まる。
「ーー愛してるよ、プロテア様。私の全てを捧げるのに相応しい人さ。……おや?どうした、皆?別に能力を使わなくてもキスをしても良いだろう?」
「クレマチス、ずるい!あたしもプロテア様とキスしたい!」
「私もしたい!」
「わたしも、する」
「え?えぇー!?」
俺は3人に追いかけられる。
それを見たクレマチスが笑っている。
ーーもう、クレマチスはひとりじゃないよ。俺がいるから。みんなもいるから。頭が良いのは欠点じゃないよ。それはクレマチスの魅力だよ。
プロテア様に出会えなかったら、愛する気持ちも知らなかったし、笑うこともなかっただろう。
だから、幸せな結末を望むんだ。
プロテア様を死なせたのは私の最悪の策略でしかなかった。私が止めなければならなかったのに。
私は私の“罪”を償わなければならない。
だから、疑わなければいけない。
花姫の“裏切り”をーー。
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