第2話 生まれ変わってもキミと〜桔梗編〜④
「ーー本当お前って馬鹿だよな」
クレマチスの言葉に返す言葉はなく、桔梗はうーと呻いている。
「花が風邪をひいてどうするんだよ。おまけに体調を崩しているから回復が使えないと来たもんだ。全くとんだ足止めだな」
「……温泉、楽しかった……?」
「あぁ、楽しかったよ。お前もさ、いい加減自分の気持ちを認めたらどうだ?」
「え……?」
「好きなんだろう?クローバーが。ユリに遠慮することはないと思うんだがな。どうせ自分は花だから人との恋は実らないと理由をつけて諦めているんだろう?ユリだって花だぞ?まぁ、お前が諦めるには一向に構わないんだがな。お前とは紫で色が被るから正直ライバルが減るのは有り難いし」
「……紫被り、気にしてたの?」
「まぁな。だから私は違いを出したくて眼鏡をかけている」
「え?眼鏡をかけてるのって、あたしとのキャラ被りを避けるためだったの!?」
「そうだよ。お前はかなり美人だからな。真正面から戦うのは得策ではないんだよ」
「てっきり知的イメージのためだとばかり思ってたよ」
「それはないな。“私、頭が良いです”なんてアピールしてみろ?私ならまず頭脳役から殺しにかかるさ」
完全にその“頭良いですキャラ”になっているクレマチスの外見には触れないでおこうときめた桔梗だった。
「……桔梗、目が覚めた?水かけてごめんなさい」
「……ばしゃーして、ごめんなさい」
しゅんとしているユリとシクラメンの頭を桔梗がよしよしと撫でる。
「大丈夫だよ、ふたりとも。羽目を外したのはあたしなんだし気にしないで」
「今ね、ヒガンバナにお願いして薬を作ってもらってるの」
ユリの言葉にこの場にいた花姫たちは凍りつく。
確かにヒガンバナは毒に詳しいから薬も作れるだろう。毒となるか薬となるかは紙一重だ。
だが。
ヒガンバナが他の花姫を排除しようとしていることはユリ以外は気づいている。
「……花姫がひとり欠ける日がついに来たか」
「ついに来たか、じゃなくて!助けてよ、クレマチス!あたしが欠けると回復がいなくなっちゃって困るでしょ?」
「……あー、それはそうだけど、あいつを敵には回したくないんだよな」
「大丈夫だよ、桔梗、クレマチス。ヒガンバナ、がんばるって言ってたもん」
「それが一番大丈夫じゃないんだよ、ユリ」
なぜかユリは自信満々だった。
「ーーヒガンバナのこと疑ったのね。みんな、ひどい。ヒガンバナはクローバーと桔梗のために頑張ったのに。他の花姫は正直どうなっても良いけど、桔梗は別。桔梗はヒガンバナの話を唯一理解できるし、回復ができるからクローバーには必要なの」
突然現れたヒガンバナにユリ以外が飛び上がった。
「これを飲んで?」
「……ちなみに成分は?」
「桔梗を使ってる」
「はぁー、やっぱりかぁ。自分の成分で自分を治すのね……」
「好き嫌いはよくない」
「……わかったわよ、ヒガンバナ。……ありがとね」
覚悟を決め、桔梗は薬を飲み干した。
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