第2話 生まれ変わってもキミと〜桔梗編〜②

「クローバー、彼女と知り合いなのか?」

【知り合いも何も、彼女が“桔梗”だ】

「!この声!間違いない、クローバーね!」


 嬉しそうに彼女が、桔梗が笑い、俺の手を握る。


「この声が聞こえるんですか?」

「えぇ、聞こえるわ。ということがキミが王子様なのね?」

 桔梗の言葉に俺は頷く。

【ーーいかにも。この子がワタシの子孫のプロテア・アーティンクアイスだよ、桔梗】


「「え?子孫??」」


 俺とクロユリの驚いた声がハモる。


「え?知らなかったの?クローバーがあたしたちを従えて、国を興した花姫の主なんだよ?」


 クローバーの正体に俺は口をぱくぱくと開閉する。

 そりゃ、ご先祖様御本人なら花姫にも詳しいはずだとひとり納得する。


【元気そうでよかった、桔梗】

「あなたと再会出来るなんて思ってもいなかったわ。話を聞かせてくれる?死んだはずのあなたが子孫と共にいる理由と、どうしてがここにいるのか、をね」


 笑顔から桔梗の表情が冷たいものに変わる。視線の先にいたのはクロユリだった。


「え、わたし?」

「そうよ。をしたあなたが、なぜクローバーと一緒にいるのか説明して」


 ☆


 ーーいやぁぁっ!クローバーっ!クローバーぁっ!!


 あたしたち花姫の悲鳴が響き渡る。

 崩れ落ちていくその身体の向こうにはがいる。

 純白だった髪は黒く染まり、血に濡れた手を眺めて笑っている。


 ーーみんな、ユリは悪くないよ……どうか責めないで……やってくれ……ユリ、ユリ……ワタシの力が及ばなくて……済まない……


 彼女が血を吐いて、クローバーの上に倒れ込む。

 クローバーと共に彼女は死んだ。



 ーーいいぞ、クロユリ。よくやった。やはりユリは黒の方が良い。なぁ、クローバー。そうは思わぬか?



 ☆


「……わたし、何も知らない。クローバーという人のこともわからない。わたしは丘で生まれて、プロテア様と出会った。プロテア様の力になりたくて、ここまできたの」

「……本当なの、クローバー?」

【クロユリは嘘をついておらんよ。あの子はプロテアのことしか知らん。まだ若い花だからな】

「……ユリにそっくりなのはたまたまなの?」

【そうだよ、桔梗。だから、もうクロユリを冷たい目で見るのはやめてやってくれ。お願いだ。……それにユリはもうだろう?】

「……それもそうね。ユリはあの日に消えたままだわ。ごめんなさい、クロユリ。敵意を向けてしまって」

「あ、謝らないでください、桔梗さん。……大切な人の仇にそっくりの相手を見つけたら、平静でいられないのはわたしにも理解出来ますから」


 一時はどうなることかと思ったが、和解するふたりをみて俺は胸を撫でおろしていた。


「……桔梗でいいよ。仲良くしましょ、クロユリ。敬語も要らないわ……綺麗な髪なのに、焼けちゃったのね。怖かったよね、熱かったよね。まだ痛む?」

「……少し、だけ」

「こっちにいらっしゃい。あたしが治してあげる。桔梗には鎮痛効果があるのよ」


 桔梗がクロユリの髪に触れると、髪はみるみるうちに艶を取り戻していく。



 ーーユリ、こっちおいで。髪、とかしてあげる。

 ーーわたし、桔梗に撫でられるの好き。

 ーーあたしも撫でるの好き。ユリはかわいいね。



「ありがとうございます。クロユリを治していただいて」

「お礼は要らないわ。他ならぬクローバーの子孫くんの頼みだもん。力も貸すよ?クローバーの国を失うのも嫌だしね」

【やっぱり桔梗は頼りになるな】

「褒められると照れちゃうな」


 桔梗は肩までの髪を揺らすと少し切なげに笑っていた。




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