もう一度咲いた花のように〜黒の呪い〜
雪花彩歌
プロローグ
鼻歌混じりに俺は店先の花を弄る。
季節は春。別れと出会いの季節だ。そういう季節柄花がよく売れる。そのため両親経営の花屋の手伝いに駆り出されている。
俺の名前は花山直樹。花屋の息子。だが、職業はしがないサラリーマンだ。花屋はなぜ継がなかったのかって?花屋は立派な立派な俺のお姉様が両親と共同経営をしている。ふんわり系のお姉様だが、ふんわりなのは見た目だけで中身はトゲトーーいや、しっかりしている。ちなみにバツイチシングルマザーだ。そういうわけで、まだ子どもに手がかかる。花屋の店先に出そうもんなら何をされるかわかったもんじゃない。だから、保育園が休みの土日に俺は駆り出されているわけである。
まぁ、いいさ。彼女ナシの俺に土日に予定があるわけでもないし、多少なりバイト代ももらえるわけだし、小さい頃からの経験も活かしこうやって働いてるわけである。
よし。依頼のコサージュもできた。我ながら良い出来だ。この百合なんかすごく良い感じじゃないか?今日はセンスが冴えている。このまま他のコサージュを作ってしまおうか。こういうのはインスピレーションが大事だしな。
ぽかぽかと陽射しが暖かい。気を緩めたら眠ってしまいそうだ。よし、休憩も兼ねてコーヒーを淹れてこよう。そう思い立ち上がったときだった。ドンと音がしたと思ったら、俺の身体は潰されていた。
「ーーすごい音がしたけど、大丈ーー」
姉ちゃんの言葉は途切れ、悲鳴に変わる。
安心させたくて伸ばした手は、ぐちゃぐちゃに潰れていていて、
あ、死ぬんだと思ったよりも無感情に俺は現実を受け止めていた。
ーーおかえりなさい、直樹。わたしのこと覚えている?
サラリと長い黒髪が俺の頬にかかり、漆黒の瞳が覗き込んでくる。美少女が俺に話しかけてくるが、見覚えはない。ふるふると俺が首を横に振ると悲しげに少女は顔を歪ませた。
ーーわたしはクローーいえ、フリチラリア。わたしと一緒に行きましょう?
ーー行くってどこに?
ーー……ひとまずは“展覧会”に。
ーー“展覧会”って、なに?
ーーわたしをみつけて。話はそれから。あなたならわたしをきっと見つけられるはずだから。
ーーちょっと待って、フリチラリア!どういうことかもっと説明をーー。
ーー……時間切れ。わたしはずっとあなたを待っているから。だから、見つけてね……?
飛び起きたベッドの上では姉ちゃんが泣きじゃくっていた。
「……あれ?姉ちゃん?俺、死んだんじゃ……?」
「奇跡的に助かったのよ……っ!ずっと意識不明で心配したんだから!」
ぐちゃぐちゃだった腕は包帯に包まれていた。
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