春夜の蒼月
たこぼう
プロローグ①
◯◯視点
窓から差し込む朝日を前に、一週間ほど前からハンガーに掛かっていた新品の匂いがする制服に袖を通す。まだ少し丈が長い制服を纏いながら洗面台のある一階に降りていく。鏡の前に立ち、寝癖がついた髪に、冴えない顔をしている自分を見ながら顔を洗い、気休め程度に髪をセットし、母親が作ってくれていたトーストとスープを口にした。少し冷めてしまっていたが、まだ暖かかった。一階に降りるときについでに玄関に運んでおいたバックを持ち、玄関のドアに手をかけた。
今日から新しく高校生になる僕は入学祝いに祖母から買ってもらったロードバイクに乗り、家から20分ほどの学校へ向かう、4月だと言うのに外はまだ春が追いついてなく少し肌寒い、風が強く、少し整えた前髪がオールバックのようになっていた、信号で崩れた前髪を振り下ろし、長めの橋を超えた先に見える学校、
高校生だからと浮かれているわけもなく、高校生活には特に何も期待していない。
駐輪場と書いてあった場所に自転車を置き、親子で歩いている数人を抜き、『入学おめでとう』と書いてある看板が立て掛けてある校門を、新入生を待っていたかのように立っていた先生に軽く会釈をし、颯爽と通り抜ける。親子や友達と写真を撮ってはしゃいでいる人もいたが、通行の邪魔にはならないで欲しい。
指示された通りに体育館に向かい、入学式と書いてある看板を前に沢山のパイプ椅子が並んでいた、前から順番に詰めるように座れと言われ、1人の女の子の隣に座った。特に目立った風貌ではなく、どちらかと言うと、自分と同じ側だと思った。時間になり入学式が始まった、話は思ったより短く、すぐに式は終わった。その後は、校庭に貼られたクラス分けの紙を見て自分のクラスに向かった。
ここ西園寺高等学校は偏差値が低いわけでもなく、高いわけでもない、いわゆる『自称進学校』というやつだろう。その中でも一応1番上のコースの特進コースに通うことになった僕は『1年K組』と書いてある教室に入る。
自由席と書いてあったので窓ぎわの1番後ろの席を選んだ。外の景色を眺めながら、これから一軍となるであろう女子達の明るい声をBGMに校庭に植えてある桜の木をながめていた。
その時薄く窓に人影が映った、お陰で隣の席に誰かが来たことは分かった。
軽く目線を向けると先程の入学式で隣に座っていた女の子だった。少し長めの前髪に隠れている目には、さらにメガネが掛かっていた、加えてマスクをしていてるので顔がよくわからない、
まぁ、校則では折ってはいけないらしいのでどちらかというと、正しいのか。
そして少し小柄な印象だった、髪は長く、とても綺麗でさらさらだった。
決してさらさらな髪が好きなわけではない、うん、本当だぞ、触らしてくれるなら喜んで触るが。まぁ僕の好みの話は置いておいて。
今日から高校生だ、担任になった女性の
「高校生か…」と誰にも聞こえないぐらいにぼそっと口にし、先生には悪いが、つまらないHRを聞き流しながしていた。
この時は何事もなく平和に3年間を過ごしたいと願っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます