社会と金と弱者 ―対話―

ピチャ

社会と金と弱者 ー対話ー

A

 「弱者になった気分はどう?って言われたら、うーん、暇。

なんも思いつかないし、作業もないし、助けてくれる福祉は整っているけど、それで金もらってもつまんない。

ありがたいことなんだけど、私は仕事がしたい。自分の実力を上げて、お給料をもらいたい。

社会はニコニコして「大人しくしておいてね」って言う。

何かされるほうが迷惑、という心が透けて見える。」


S

 「あんたはいつも見かけの弱者かどうかで区別しているのかい?

社会はね、金になるかどうかなんだ。

強者とか弱者とか関係ないの。

金を稼げない人から死ぬの。

私にはプライドがあるし、苦労したこともある。

あんたは追い詰められたことがないのね。

のんびりと何も考えずに生きている。

私はそういう人、嫌い。

生きようとしない人が嫌い。

いろんな人の支援を受けて生きているのに、それに感謝せず当然のこととして、金だけ受け取っている乞食。」


A

 「日々支援しているつもりだけど、なぜ社会は受け入れてくれないの?

私のように弱者のサポートできる人はそういないと思うけど。必要なことじゃん。」


「あんたの言うサポートは、ただの邪魔なのよ。

社会性が欠けているわ。

私たちはレッテルを貼られた置き物じゃない。

支援するなら、黙って金だけ頂戴。金ならあって困らないし。

あんたが暇暇言うから、社会が仕事を与えてくれているのに、受け入れてくれないなんて傲慢じゃない。

淡々と与えられたことをやっていなさいな。それがあんたの実力に見合った評価よ。」


 「私は、いっそあなたを恨めたら良いのにとおもいます。

勝手に人に尽くしすぎて、倒れて死なれても困るので。

休みをとらないなら、足を引っ張ってでもとらせるしかありません。

それくらいしかあなたにできることがないのです。

みんなで頑張りましょう。私たちを置いてひとりで仕事できる人間を気取らないでください。

ワンマンプレーしたいなら、個人でできる仕事をしてください。」


 「私が気になるのは、あなたが自分の人生を生きていないことです。

あなたは人を支援しているつもりなのかもしれませんが、何よりあなたが支援されていません。

支援したつもりで邪魔していた、なんてことは誰にでもあります。

それは注意していただくとして、問題はあなたの心です。

あなたはなぜ人を支援しているのですか。

自分で自分を苦しめていませんか。

自分を大事にできぬものが、他者を大事にできるのでしょうか。」

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社会と金と弱者 ―対話― ピチャ @yuhanagiya

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