第22話 お嬢様、仲良くなるチャンスです!
店内に足を踏み入れると、俺とお嬢様は揃って歓声を上げた。
すげえ、壁一面に紅茶缶がびっしりと並んでいる。中央のテーブルには時期のおすすめの紅茶缶が飾られていて、試飲もできるのかポットやカップもあった。
そして、何よりめちゃくちゃいい匂いがする。これだけですごく癒されるなあ。
「エルブティーは奥に並んでいるものがそうですわ。エルブティーの効能に関してはお店の方がよくご存知だから、ぜひ聞いた上で購入するのがおすすめです」
「な、なるほど……」
「すみません、エルブティーについてお伺いしたいのですけれど」
マリー嬢が店奥にいた店員さんに声をかけると、「バルテル様、いつもご贔屓にありがとうございます」と深々と頭を下げてきた。
「ここは、妹の行きつけだ。紅茶のことも、妹に聞くといい」
背後からいきなりバリトンボイスが聞こえてきて、お嬢様も俺も揃ってビクッとしてしまった。
ぶ、ブラン、こいついつもいきなりだな……そういや、攻略した時もいきなり出てきて主人公をビビらせてたっけ。口下手なキャラだから、会話のリズムがちょっと独特なんだよな。攻略キャラクターの中じゃ、割とマトモな部類だけど。
「そ、そうなんですね……あ、じゃあ、お嬢様、ペルルのこともマリー様に教わったらいかがですか?」
「えっ、で、でも、あたしたち、あの子をもてなすためにペルルを買いに来たのよ?」
「いいじゃないですか。マリー様の好みに合うペルルを選べば、よりマリー様に喜んでもらえますよ」
「そ、そうかしら……でも……」
お嬢様がもじもじとして躊躇っていると、マリー嬢がこっちに向かって手招きをした。
「ありましたわ。馬車酔いに効くエルブティーはこちらのようです」
「ありがとうございます! ほら、お嬢様」
俺が促すと、お嬢様はもじもじしながらもマリー嬢の元へ向かった。
結果、俺たちは馬車酔いにいいエルブティーの茶葉と、マリー嬢がお気に入りだと言うペルルの茶葉を購入した。
今度のお茶会に出すペルルの茶葉を買いに来たんだと、俺の催促の末お嬢様がようやく口にすると、マリー嬢は優しい笑顔で「とても光栄ですわ」と言ってくれた。
「紅茶はどれも好きですが、ペルルは一番好きなものなので、メルセンヌ様に私の好みを知って頂けて嬉しいです」
「そ、そう……ですの」
「ふふ、よろしければメルセンヌ様の好みもお聞きしたいわ。もしお時間があれば、お茶をしませんか? お気に入りのお店があるのでぜひご紹介させて下さい」
おお、マリー嬢、めっちゃグイグイくる……! 大好きなお茶のことを聞いてくれたのが、好印象になったんだろうか。
「え、お、お茶? わ、私外でお茶なんて……」
「あら、初めてですか? ならば無理にとは」
「いえ! 是非お伺いしたいとお嬢様が申しております!」
「ちょ、ちょっと、ジュリー!」
お嬢様に任せていたらこの機会を逃してしまいかねない。
俺が即座に声を上げれば、お嬢様からは睨まれたものの、マリー嬢は嬉しそうに微笑んだ。
「メルセンヌ様はケーキはお好きですか? そちらのストベリーのケーキがとても美味しいのですよ」
「え……ケーキ?」
お嬢様の目がきらきらと輝きだす。効果は抜群だ!
「マリー、あのカフェテリアに行くなら、近くの書店にも寄った方がいいんじゃないか? ついでに買えるだろう、例のアレが」
突然、俺たちの背後にいたブランがそう告げた。
……この人、いちいち背後から話しかけないで欲しい。いちいちビビっちまうから。
すると、マリー嬢は途端に頬を赤らめてぷるぷると首を振った。
「そ、それはだめよ、お兄様……アレは、人前では……」
「えっ」
「しかし、今日書店に並ぶんだろう? 早く手に入れたいと朝から言っていたじゃないか」
「そ、そうだけど……でも、私……」
マリー嬢は八の字眉になっていやいやと首を横に振っている。普通にかわいいけど、何だ? 書店ってことは本を買いたいんだろうけど、何で恥ずかしがっているんだろう。
「迷っているうちに売り切れたら手に入らないぞ。いいのか?」
「っ、それはだめ! ……ですわ」
「それなら、先に書店だな」
「……分かりましたわ。メルセンヌ様、先に書店へ行ってもいいかしら?」
「え、ええ……」
おずおずとお嬢様と俺が頷くと、マリー嬢は恥ずかしそうに俯き、ブランは相変わらず何を考えているか分からない顔で頷いた。
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