第16話 ユキノという人間
「カオリちゃん、ユキノとはあんまり
話さないほーがいいよお」
ハテナが浮かんだ。
「誰ですか?」
「リサに言われなかった?」
特にリサさんから、その人の名前を
聞いたことは無かった。
「ユイさん、どういう人なんですか?」
「んー…ちょっとやっかいなやつー?」
飴を舐めながら言う。
今日はりんごの味らしい。
私はいちご味を貰った。
「何回か、リサと喧嘩してるんだよねえ
中々部屋から出てこないけどリサとは
反対のタイプ?」
んーと考えてたら、リサさんが来た。
「やっと割り算おわったよおー!」
「リサ、ユキノの話してないのー?」
一瞬リサさんの顔がひきつったのを
私は見逃さなかった。
「リサさん、言いたくないなら言わなくていいです」
「いや、話しておくよ」
ユキノさんは、25歳でごはんはかならず
自分の部屋。作業療法にもでない。
たまにナースステーションの窓に向かって
ここから出してと発狂してること。
ロリータ風の服装をしてるから
いたらすぐわかるとのこと。
「ユキノに目つけられたらやっかいだから」
「そうなんですか…」
※※※
その日の夜、窓際に座りながら
勉強をしていた。
中々解けない問題に奮闘しながらも
ここだけはやろうと決めていた。
「アナタ、だあれ?」
フリフリのスカートに
縦ロールの髪型。
所謂、ロリータ風の服装で
大きな目でこっちを見ていた。
「…カオリです。」
「カオリさん?はじめましてユキノですの」
昼間、ユイさんとリサさんの言っていた
噂の人物、に出会ってしまった。
「すみません、いま勉強してるので…」
「お邪魔するつもりはないのよ?
アナタ、リサと仲良いでしょ?」
「一応同じ部屋ですが」
その大きな目が怖かった。
なぜかそう思った。
「私、ナースステーションに用事があるの、
アナタは勉強しててくださいな」
「…はい」
するといきなりドカッ!ドカッ!と
大きな音が鳴った。
「ここから出しなさいよ!この約立たず!」
さっきとは全く違う剣幕で
椅子でナースステーションの
窓を叩いている。
それを見て、泣き始める人
怯える人が一気に増えた。
「ユキノさん!やめてください!」
自分でも不思議だった。
その騒動を止めようと勝手に体が動いた。
「アナタには関係ないでしょ!」
と言った瞬間に
頭に痛みが走った。
イスで殴られたのだ。
その時、リサさんがやってきて
私が頭から血を流してるのを見て
リサさんがユキノさんを
思い切り蹴り飛ばした。
「ユキノ!早く部屋に戻れっ!」
すぐに看護師がきて私の出血を
抑えるためにガーゼで押えてくれていた。
幸い傷はそこまで深くなく縫うほどでも
なかった。
おでこの横らへんに処置をしてもらって
その場はなんとかなった。
「カオリ、大丈夫?痛いよね」
「思ったより痛くないです、大丈夫」
「音楽聴いててすぐこれなかったごめんね」
リサさんが悲しそうな顔で謝る。
ユイさんが言った
「まあ、そろそろ暴れるかなーって思った」
やっぱりここは少し怖い。
カナエちゃん、リョウさん、ユイさん、リサさん
いい人ばかりではないこと。
看護師さんに言われた。
この事は一応、親御さんに報告するとのこと。
辞めて欲しいと言ったけど
通用しなかった。
「カオリ、あたしから離れないで」
リサさんが言う。
この人はどこまで優しいのか。
ユキノさんの印象は悪いままだが
決して悪いところばかりじゃないと
ふと思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます