第47話

「ククリ……、大好きだよ。愛してる」


「うん、俺も、愛してる。アスラン……」


 

 アスランがその長身をかがめ、俺に頬を寄せる。


 俺が顎を上げると、アスランは少しだけ顔を傾けて、その唇で、俺のそれに触れた。



 そう、ようやく、俺の……、


 記念すべきファーストキッス!!!!



 そっと触れただけで、すぐに唇は離れた。



「ククリ……」


 頬を赤らめ、アスランが俺を見る。




 誓いのキスを終えた俺たち。


 会場が、大きな拍手に包まれる。


 シルバーのタキシード姿で微笑む、俺の美しすぎる旦那様!!!!



「アスランっ!」



 好き好き、大好き!!

 もう、好きが溢れて止まらない!!





「……っ、ククリっ!!!!」




 ……って、


 ――アレ?



「えっ、あ、んあっ、んっ……」


 え、これって……、



 気づくと、俺はアスランのそのたくましい腕に、きつく抱きしめられており……、



「ああっ、もう、我慢できないっ……、ククリっ!」


 俺はもう一度、アスランに荒々しく口付けられていた!!



 呼吸をしようと俺が口を開けると、待ってましたとばかりに、熱く湿った舌が俺の中に入ってきた。



「んっ!!!!」




 ちょ! 結婚式の誓いのキスで、ベロチューとか!!!!





「んっ、はあっ……、アスランっ、もう、離し……」


「駄目、もう、止まらない……っ」


「でも、今、結婚式の、最、中っ……!! んあっ……」



 上顎を舐められると、俺の身体にピリピリと電流が走った。




 ざわめく会場。


 だが、今まで我慢に我慢を重ねたアスランを止めることなど、誰にもできず……。



「ふっ、あ、はあっ……、はあっ……」



 俺がアスランから開放されたのは、アスランに約数分間、たっぷりと口内を舐め回されてからだった……。






「アスランっ!!」


 涙目で俺はアスランを見上げるが、アスランは涼しい顔。



「おいっ、貴様っ! 神聖な式をっ……、ぐっ!」


 我慢の限界だったのか、ジェノ兄様が立ち上がろうとするが、隣のエリザ義姉様にむんずと後ろ首を捕まれ、一瞬で座席に戻された。


 見ると、エルミラお母様の顔は怒りで青ざめ、その両手に握りしめられた羽の扇は、折れそうなくらい不自然にたわんでいる。



 そして、お父様と長兄のレヴァン兄様は、ともに額に手を当て、呆れ顔……。


 レヴァン兄様の妻、ロレッタは口をぽかんと開けたまま、驚きを隠せない様子……、そしてその隣のレヴァン兄様の娘・ジャナ(アスラン命)は、行き場のない怒りでその小さな身体を震わせていた……!



 対するアスランの両親、妹をはじめとする親族一同は、さきほどのアスランと俺の激しいディープキスなど最初から見ていなかったかのように、眉一つ動かさず、穏やかな表情をキープしている。



 ……アスランのポーカーフェイスは遺伝によるものだったのか……!!!






 ――そう、今日は俺たちの記念すべき2回目の結婚式!!




 会場は、アスランの生まれ故郷である、ベリーエフ伯爵領の教会に、二人で決めた。


 シルバーを基調とした俺たちの婚礼衣装や、中庭で行われるパーティの飾り付けやテーブルのコーディネートを考えたのは、もちろん俺!


 パステルカラーに溢れたいわゆる「ゆめかわ」だった、前回のパーティに比べて、スタイリッシュかつエレガントをコンセプトに俺がトータルプロデュースしたというわけだ!



 俺たちは2回目の結婚式で、ようやく自分らしい式を挙げ、アスランと俺は、本当の意味での人生のパートナーとなったのだ!



 そして……、


 式の最後には、国王からの命を受けた王宮からの使者が、アスランに目録を渡した。



「アスラン・ベリーエフ、配偶者・ククリ・ベリーエフの20歳の誕生日である本日、王命により、貴殿にメルア公爵領近接の地に、山林を含めた新しい領地を与える。

また、騎士である貴殿に、新しい騎士団を結成する権利を与える。団員は、その騎士団長により任命することができる。

……詳しいことはその目録に記している」

 


「ありがたく頂戴いたします」


 目録を受け取ったアスランは、真面目な顔をして俺に向き直った。




「ククリ、君にお願いがあるんだ!」


 思えば、アスランに何かを頼まれたことなんて、今まで一度もない俺。



「いいよ。俺にできることなら、なんでも!」



 俺の言葉に、アスランは片膝をついて騎士の敬礼をした。





「ククリ・ベリーエフ。どうか、私の結成する新しい騎士団の、

騎士団長になってください!」





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