第39話

「両、想い……っ!!」


 およそ信じがたい、といった表情で、ルカもその場にフラフラと立ち上がった。



「そうだよ、だから、もう小細工なんて、しなくていい!

アスランも、ルカにずっと片想いしてたんだ!

だから、お前たちは両想いだっ……!」



 そう、俺は確信していた。


 いままで得てきた情報すべてを総合し、アスランがずっと思い続けてきた相手……、近すぎるがゆえに、規制があるがゆえに、手を出すことができない相手……、



 それは、魔法騎士団のバディである、ルカ・レオンスカヤなのだと!



 そして、俺とアスランをなんとかして離婚させようと暗躍するルカもまた、アスランをどうしようもなく愛しているのだと!


 ――だから、いわゆる二人は、両片想いというやつで!!!!





「はっ、はははっ、アハハハハハッ!!!!」


 ルカは急に大声をあげて笑い始めた。



「なに? どうしたんだ、ルカ!」



「ははっ、私はすっかり貴方という人を誤解していたようです。

ああ、なるほど、そうなるわけですね。ククリ様の思考回路では……」


 笑いすぎたために出た涙を拭うと、ルカは俺のところまで近づいてきた。



「ルカ……?」


 俺は背の高いルカを見上げる。



「どうして、アスランが、私を好きだと?」



 美しく気高いルカ。こんな人がずっとそばにいたら、きっとアスランだって……!



「だって、アナスタシアが言ってたんだ!

アスランには手を出したくても出せない、ずっと好きな相手がいるって。

すごく近い場所にいるのに、規制があって行動に移せないって、それって、ルカのことだろ?

あと、コミュニケーションパーティで、俺がルカにクッキーをあげたときも、アスランはそれを取り上げて、代わりに自分が作ったクッキーをあげるって、約束してた……。それに、魔法騎士団の団員も、二人は絶対デキてるって……」



 俺の言葉に、ルカはニッコリとした。



「ああ、ククリ様、貴方は、どうしてこう、昔から早とちりなんでしょう。

アスランのことはともかく、どこをどうやったら、私があのアスランを好きになるなどという結論に至るのですか?」



「だって、それは……」



「しっ、その話は今から、あとからゆっくり聞かせていただきます――、私の寝室で」



 そう言うと、ルカは俺の眉間に人差し指を当てた。





「コンパルション!」




 とたんに、俺のすべての動きが封じられる。



 ――強制の呪文!



 俺はルカに、自分自身の制御を奪われてしまった。



 ――まさか、こんなところで、ルカに魔法をかけられるなんて!!




「ふふっ、油断しましたね、ククリ様。

でも残念です。この紅茶を飲んでいただけていれば、今から私の部屋で行うことが、もっと楽しくなったでしょうに……。

なに、ちょっとした媚薬の一種ですよ。あとから口移しで、私から飲ませて差し上げましょうね。

では、参りましょう……」



「……!」



 声まで封じられてしまったのか、何か言おうにも、俺の喉からはかすれた吐息が出るだけだった。



 ルカはそのまま俺を軽々と抱き上げると、俺の耳元に口を寄せた。





「ククリ様、私のククリ様への想いがどれほどのものか、今からじっくりとわからせてあげましょう……」





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