第20話

 ルカ・レオンスカヤ……。


 彼を一言で表すとすると「美人」という言葉がぴったりであると、まさに今ルカを目の前にした俺は思う。


 もちろんルカは男性であり、魔法騎士団の実力者でもあることから、決して女性のような可憐な見た目ではない。


 身長も高く、もちろん十分な筋肉だってついている。所作も素晴らしく洗練されているが、なよなよしているわけではない。



 だが……、


「ククリ様……、ずっと貴方のことを案じていたのですよ」



 優しげにほころばせた口元。


 肩に流れ落ちる美しく長い銀髪。


 そして……、青と緑の中間色の得も言われぬ色の瞳……。



 その隠しきれない色気に思わず息を飲むのは、女性ばかりではない。



「ルカ、先日は迷惑かけたな!」


 そして、俺とアスランの一つ年上であるルカもまた……、



 かつては、俺の配下としてチームに所属していた!




 ルカは、俺がアスランと二人っきりになる最後まで、辛抱強く俺のそばにいてくれた人間だ。


 アスランが俺のチームに入るまでは、細かいことまでよく気がつく俺の右腕として、長年俺に尽くしてくれていた。



 剣術だけでなく魔法も得意だったルカは、その後、魔法騎士団に入職。

 魔法の実力では魔法騎士団随一と言われ、今はアスランとバディを組み、二人で活躍しているらしい……。




「ククリ様、あんなことがあったというのに、アスランと一緒にパーティに来られたのですか?

あのことはアスランは知っているのですか?

……もしや、アスランになにか脅されて……!?」


 ルカはその美しい眉をひそめる。



「いや、大丈夫だ。そんなことは一切ない。

そのことについては、俺に考えがあるから大丈夫だ!」



 俺の胸はズキリと痛む。



 ーー俺は、かつてあれほど俺に尽くし、今では俺の夫の同僚としてさんざん世話になっているこの男に、これからひどい仕打ちをしようとしている……。




「そうですか。その考えというのは……、今のククリ様の装いの変化に、関連があるのですね?」


 アスランと同じく、頭の切れるルカ。


 俺の考えていることなど、すでにお見通しなのかも知れない。



「俺、アスランとは離婚しようと思う。それも、できるだけ早く!」


「それは……っ!」


 ルカはびっくりした表情で俺を見た。



「まだ、アスランには話していないんだ。今日家に戻ったら、切り出すつもりだよ」


「そうなのですか……、ククリ様の決意は固いのですね。

ですが、アスランは了承するでしょうか?」


 ーーいや、すぐにでも離婚したいと思ってるはずだよ!!





「そこは、ちゃんと話し合ってわかってもらうつもり。

ルカ、頼みがあるんだ。お前が見た湖でのあのことは、今後誰にも黙っていてほしいんだ。

この離婚で、アスランの非があることにはしたくないんだ!」



「ククリ様、どうして貴方は、そこまで、アスランに……」


 ルカが憮然とした表情になる。



「今までアスランにはさんざん迷惑をかけてきた。この結婚も、ほとんど俺のワガママから始まったみたいなもんだ。

だから、その終わりも……、俺のワガママってことにしたいんだ」



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