第14話
「ククリ様、大丈夫なのですか?
旦那様に離婚を切り出されるのではなかったのですか?」
部屋に戻った俺に、男物のシルクのパジャマを差し出してくれるネリー。
「うん、そのはず、だったんだけど……、さすがにあの魔法騎士団のパーティがあるのに
いますぐに離婚してくれって言うのも、気が引けて……」
俺は口をつぐむ。
アスランが不貞を行っていたとはいえ、それは多分にというか、ほとんど俺の非のせいであるかのだから…‥。
結局、ドレス姿でパーティに参加するわけにもいかないので、アスランと話して、明日に店に行って男物の礼装を急遽作り直すこととなった。
休みを取って一緒に行こうか、と優しさを見せてくるアスランを断って、店にはネリーと行くことにした俺。
「そうなのですね……、ククリ様……」
あえて何も聞いてこないネリー。おそらく、俺の心の中にアスランへの気持ちがまだ強く残っていることに勘づいているのだろう。
――そうだ、前世を思い出したといっても、今までのこの俺のアスランへの想いが消えてなくなったわけではない。
アスランが、好きだ。
本当は、ずっとずっと一緒にいたい。
こんなろくでもない結婚生活でも、毎日アスランと過ごせるなら、俺にとってはこれ以上なく幸せなことだ。
でも……、
アスランの気持ちを考えれば……、
俺は……、絶対に……!
「そうだっ!!」
俺はそのとき、とんでもなく素晴らしいアイデアを思い付いた。
どうやら久しぶりに腹いっぱいになって、栄養状態がすこぶる良くなったため、脳にまで栄養がいきわたったらしい!!
「ククリ様……?」
「ネリー、俺にすごくいい考えがあるんだ。
コミュニケーションパーティでこれを実行すれば、俺とアスランは絶対にスムーズかつ、あと腐れなく離婚できるっ!!!!」
「まあ、ククリ様っ!!!!」
俺はまだその時気づいていなかった。
俺の夫、アスランという男は、決して一筋縄ではいかない、ものすごく手ごわい男であるということに……。
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【なぜか結婚対象外になってしまう女性のあれこれ!】
「趣味の悪いプレゼントを押し付けられた時は、どうしようかと真剣に悩みましたね。
ああ、やっぱりこの子とは合わないんだな、と」(男性・27歳・技術職)
「お菓子作りが得意って言ってたのに、バレンタインデーにくれたチョコレートケーキが激マズ!
結婚は絶対に考えられないとその時思いました」(男性・31歳・サービス)
「八方美人な子って本当に最悪! モテてるつもりかしらないけど、浮気性な女性との未来は絶対にない!」(男性・35歳・教育関連)
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これは、俺が前世でスタイリストをしていた時に知り合って仲良くしていた、大人気インスタグラマー・響子の著作、
『恋愛のトリセツ ~大好きな彼に愛される25のメソッド~』よりの抜粋である……。
彼女は「恋愛のスペシャリスト」として、若い女性の信奉者が多数おり、彼女の指南書を読めば、必ずいい男と結婚できる!!との触れ込みであった。
だが、俺は知っている。その響子自身は、なんといわゆるダメンズ好きで、いつも変な男に引っかかっては、西麻布のバーで俺に絡んでくる酒癖の悪い女だった。
まあ、響子自身の恋愛についてはさておき、なぜ俺が彼女の著作のこんな詳しいところまで覚えているかというと、何を隠そうこの部分、俺が自分の知り合いからヒアリングして、本に掲載したところだったからだ。
そして――、アスランと離婚を進めようとしている今、これは大変重要なファクターであることに俺は気づいた!
それなので!!!!
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