病弱プリンス

目の前に顔色がほぼ土色でふらふらと歩いてる人がいる。


授業が終わり、

今日はバイトもないからまっすぐ帰ろうかなと思っていたけど…。


ふらりふらりと歩いている姿が顔色と相まってゾンビのようだ。


初対面ながらどこかにぶつからないかと冷や冷やとしたが、

次の瞬間窓ガラスに頭ごと突っ込みそうになって慌てて間に入った。


「あの、大丈夫…じゃないですよね!

保健室行きましょ…って聞こえます?!」


倒れ込むように崩れ落ち、腕と足はだらりと力が入っていない。気を失ってるようだった。


今日に限ってリュックだからおんぶで運ぶのも出来ないし、しょうがないと横抱きにして保健室へと運んだ。


「失礼しまーす」


と扉を開けると保健医の先生が驚いた様子で駆け寄ってきた。


「どうしたの!?」


「具合悪そうで目の前で倒れて意識もなかったので運んできました。」


真っ青を通り越して土色になってる顔を見るなり保健室常連の人らしく、「ああ、この子か。ありがとう。あとはこっちでやるから」と言われ、そのまま保健室を出た。


ここまで来る間ざわざわといつもより騒がれてたし、あの人には悪いことしたなぁ。


体調が良くなって次に学校来た時、変に騒がれなきゃいいけど。







目を覚ますと真っ白い天井が見えた。

起き上がると保健医の先生が飛んで来た。


「若王子さん大丈夫?」


「僕…、もしかして倒れました…?」


「そう、一年生の子が運んでくれたのよ。

お姫様抱っこで」


「……え?」


お姫様抱っこ?僕が?

絶対に無縁だと思っていた言葉に動揺する。


てっきりまたキャンパス内のどこかで行き倒れたと思っていた。


先生は作りたてで湯気が出ているホットココアを手渡しながらにこにこと笑った。


「それにしても…、運んできた子があの有名人なだけに、ちょっと面白い図だったわね」


「有名人?」


「一年生の七咲葵くん。見た目は可愛い女の子みたいなんだけど男の子なのよ。

その子が王子様の貴方をお姫様抱っこで運んでくるんだから」


七咲葵。

そういや今年の一年生に何かと話題になっている子がいると聞いたことがあるようなないような。


大体保健室で寝ているから記憶は曖昧だけど、

助けてもらったからちゃんとお礼を言わないと。


見た目は可愛い女の子だけど男の子。


確かに薄らとした記憶だけど倒れて意識を手放すまでのほんの僅かだけどフリルのスカートが見えたような気がした。


しかし肝心の顔が分からない。


先生が言っていた内容だとそれなりに有名人らしいし、明日辺り人に聞き込みしながら探すとするか。


とりあえず今日はもう少し寝とこうと先生の小言を子守唄に目を閉じた。

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