姉と弟
「ねえねえ、なのはちゃんって葵の彼女?」
愛香ちゃんと鈴森さんが別室に移動して直ぐにそんなことを言われ、
思わずコーヒーが気管に入りむせた。
「なに、突然」
「突然じゃないでしょ〜?
なのはちゃん思いっきり葵のこと好き!みたいな顔してたし。
望以外の子と仲良くなったなんて私知らないし!
ましてや女の子!そりゃ気になるっしょ!」
ぐいぐいとどうなの?と迫られ、
詳細を話すのは嫌だが
黙ってると余計に面倒になるのが目に見えたため渋々口を開いた。
「昨日告白された…けど、
僕は鈴森さんのこと知らないし
まずは友達からってことになってる。
てか、大学生になったんだからいちいち言わなくてもいいでしょ」
「そりゃ可愛い可愛い弟だから心配じゃん?
なのはちゃん見る限り、
今までの周りの子とは違うんだろうけどさぁ。」
僕と姉達は年が離れてるから変に過保護なんだと思う。
特に美優ちゃん。
愛香ちゃんとは七つ、美優ちゃんとは六つ違いで
僕が中学に入った頃二人共専門学生だったし、
弟と息子の中間のような感覚だと思った。
少なくとも自分視点ではそう思ってた。
今日、鈴森さんに昔の話をした時
美優ちゃんにキモいって言われた中学時代を思い出した。
その当時思ってた
美優ちゃんは専門学生だから、
偏見が少ない世界にいるからそういうこと言えるんだ!っていう気持ちも鮮明に思い出した。
僕の反抗期の相手は母でも父でも愛香ちゃんでもなく美優ちゃんだった。
気が強いギャルだから言葉は強くて、
そのくせ耳が痛いほどの正論だから無性に反抗したくなった。
でもその分、ちゃんと自分自身に素直になって
スカートを履いたりするようになった時
一番最初に僕に対して
『良いじゃん』と言ってくれたのも美優ちゃんだった。
どんだけ反抗する相手も
認めてくれて嬉しかった相手も美優ちゃんだった。
そんなことを思いながら
「今日鈴森さんが会ってみたいって言ったから、パーソナルカラーもあるだろうしって連れてきたけど…
僕も美優ちゃんに言いたいことあったんだ。
ずっと味方でいてくれてありがとね、
美優ちゃんが傍にいてくれて良かった。」
と言うと、ぽかんとした顔で呆けた後
「何?姉離れ?それとも死ぬとか?」
「ずっと照れくさくて言えてなかったから改めて言ったんだよ!
てか姉離れはもうしてるし!」
「嘘でしょ!?
美優ちゃ〜んネイル変えて〜!って来るし、
新作買いに行こ〜ってすぐメールするじゃん!」
「それは新しいネイルサロンとかだと出来が不安だし、ここ料金安いし!
弟割りで安くしてんの知ってんだからね?!」
と言い合いしてると愛香ちゃんと鈴森さんが出てきた。
「なに、また喧嘩してるの?
仲悪くなったり、かと思えば仲良しだったり
忙しいわよね二人共
なのはちゃんの前でみっともないわよ〜」
「あの、これ止めなくていいんですか?」
「いいのいいの、いつもの事だから」
口喧嘩は絶えないけど今までの感謝を伝えた時に
一瞬泣きそうになりながら
必死に笑って誤魔化してた美優ちゃんにつられて
僕も泣きそうになり、
鈴森さんを連れて足早と外に出た。
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