お前……あのトイレで

ゆゆ太郎

お前……あのトイレで

―――とある2人の青年で公園のベンチに腰掛けとある会話をしている。


「お前、……あのトイレで用を足したのか?」

「おう」

「あのトイレの神様がいると言われた祠の近くのだぞ?」

「おう」


青年の質問にもう片方の男はボンヤリとした感じで返事をする。


「正直……あそこの公衆トイレ汚くないか?」

「おう」

「俺も1回だけ入ったことあるけどよ……ムカデとかGゴキブリいるじゃん」

「そうだな」

「俺さ、その時我慢の限界だったけどあれ使うくらいならってこの歳で漏らす方選んだわ」

「そうなのか」


トイレの神様のいる近くのトイレなのにも関わらずかなり不潔なようだ。


「それなのにお前使ったのか?」

「おう」

「しかもあれ和式なのにか?」

「おう」

「まじかよお前」


最近の若者は和式トイレに慣れておらず苦手意識を持つものは多いらしい。


「しかもその日お前彼女とのデートじゃなかったか?」

「おう」

「なんか……災難だったな」

「いや、その後に使が良かったぞ」

「……は?」


男の『一緒にトイレを使った』という言葉にもう片方の男の目は点になっている。


「一緒に使ったってどういう事だよ」

「ヤったってことだ」

「いや……訳わかんねぇって」

「性行為をしたってことだ」

「それは分かるけど……いや、やっぱ分かんねぇわ」


男の言葉にもう片方は頭を痛くしたのか右手で抑えている。


「なんでわざわざそんな所でヤったんだよ」

「人に見られたく無かったからだ」

「いや、他にいい場所あっただろ?」

「我慢出来なかったんだ」

「お前は猿かよ……」

「おう」


それにしてもトイレの神様がいる近くですることでは無い。やっている行為は罰当たりという他あるまい。


「お前……そんな事してっと彼女に振られるぞ?」

「おう、もう振られた」

「……そうか」

「行為中にいきなり腹が痛くなって彼女の前で漏らしたら……振られた」

「そりゃそうだ。まぁ、トイレの神様の怒りにでも触れたんじゃないか?」


まぁ、あんなことをすれば怒りに触れるのも当たり前だ。


「……神様と言えば実はトイレに紙がなかったんだ」

「それは……ドンマイ」

「だから祠の中の地蔵で拭いたんだが…… ザラザラしてて切れ痔になった」

「お前、最低だな……紙の変わりにトイレの様使うのは神経疑うわ」

「すまん」


すまんで許される様な内容では無い。


「所で、さっきからこっち見てるおじさんはお前の知り合いか?ずっとお前の方を睨んでるが」

「いや、知らない」


『……お前の尻に吹かれた神だこのやろう!』

「え、あの……自分が神様だとか頭大丈夫ですか?」

『大丈夫だけど大丈夫じゃねぇわ!洗ったのに頭ちょっと茶色いまんまなんだわ!』

「うん、言ってることがほんとかは分からんけどお前謝れよ」


「すまない……次行く時は綺麗に洗う」

『いや、もう来んな!言いたいこと言ってしたし今回は特別に許してやるから。というか来ないでくれ』

「スッキリ……トイレだけにか」

『大して上手くないし騒がしいわ!』


【終わり】



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

お前……あのトイレで ゆゆ太郎 @katuhimemisawa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画