第2話
どうやらこの謎のコメント欄は本当に今現在、リアルタイムでどこかの誰かが反応してコメントをしているものらしい。
おそらく頭を打ったのが原因だろうが、こんなのたまったものではない。
:何見てんだクソだらぁ
:朝凪ちゃんと話し合いな?
:こっち見んな
:キャー! 奏多くんあっち向いてー!!
:はよラブコメを見せやがれください
:ワイらとの会話は後じゃ!
:みんな奏多くんに辛辣やなぁw
こいつらは俺のアンチなのか? そう思うくらい棘のあるコメントが流れているが……。
「冴島くんどうしたんですか?」
「ああ、いや、なんでもない。とりあえずお見舞い来てくれてありがとう。気にしてないんでもう――」
「はい! 全力で恩返しをさせていただきますっ!!」
「……いや、いらな――」
「おじーちゃんが『恩を受けたら自分が満足するまで返せ』って言ってたので、そうします!!」
これは厄介だ。満足するまで付きまとわれるとなると、学校でも四六時中一緒にいて目立つかもしれない。
朝凪さんは誰が見ても美少女なので、このままでは俺の平穏な高校生活が崩れる危険性がある。
「じゃあ……そうだなぁ、多分同じ高校だし、通えるようになったら案内とかお願いするわ」
「わかりました。たしかに一緒の制服でしたもんね! じゃあ次は何をしますか?」
「えっ、次?」
「はい! 私、冴島くんのためなら何でもします!!」
「なっ!?」
俺の手を握り、真剣な眼差しで俺を見つめてくる朝凪さん。あまりの動揺でボッと顔が熱くなる感覚がした。
:お
:キターー!
:ん?
:今何でもするって……
:フ ィ ー バ ー タ イ ム 突 入
:おい奏多、何にやけてんだ?w
:奏多「ニチャァ……」
:健全な男子高校生だな!
ええい、うるさいぞコメント欄。
一瞬邪な考えが頭に浮かんだが、それを振り払って朝凪さんと向き合う。
「と、とりあえず保留でお願いする……」
「そうですか……わかりました! あ、あと私も敬語とかなしでお話ししてもいいですか!?」
「そりゃもちろん、気にしてないからいいが」
「やった! 田舎から出て初めてのお友達……! 改めてこれからよろしくね、冴島くん!」
「っ……。あぁ、よろしく、朝凪さん」
:ヒューヒュー!
:お熱いねぇ……
:おじさん元気になっちゃうヨ!
:顔が赤いぜ奏多ぁ〜w
:"まずは"お友達から、ね
:よかったね奏多くん、美少女の友達ができて
:これからが楽しみやね
:二人のラブコメはこれからだ――!
:↑打ち切んじゃあねぇ
うざったいコメント欄を横目に、俺と朝凪さんは友達となった。
# # #
その後、病室を後にした朝凪さんと入れ替わるように病院の先生と母親がやってきて、軽い検診をした。
特に異常はなく、すぐに退院できるとのことだったが今日明日いっぱいは入院することに。
そして、誰もいなくなった病室でこいつらと話すことにした。
「……で? なんなんだよお前らは。どっから俺を見てんだ?」
このコメント欄に溢れる文字の主。
一体どこの誰なのか。どこから見ているのかなどが気になり、俺はそう問いかける。
:すぐ近くで見てるゾ
:強いて言うなら目の前?
:貴様の後ろ
:ちなワイら人じゃないw
:我らは奏民なりッ!!
:妖精とか精霊みたいな存在やで
:人からは見えないんだよー
「え、そうなのか。でも『ワイ』とか『やで』とか言ってる妖精はなんかやだなぁ……」
:は?
:殺すぞ〜〜!
:そうかそうか、君はそういうやつだったのか
:多様性の時代やぞテメゴラ
:【悲報】奏多氏、妖精差別発言をする
:覚悟はいいか? 俺はできてる
随分とネットの知識を取り入れてる妖精たちっぽいが、俺はすんなりと受け入れた。
高次元的存在じゃなきゃ、さっきの突風を起こすスパチャ(?)も説明がつかないしな。
その後、このリスナーたちから色々と詳しく聞いてみた。
どうやら妖精というのはどこにでも、誰にでもついているらしく、その数が多いほど波乱万丈な人生を歩んでいるとのこと。
妖精の言葉が聞こえるという人はごく稀にいるらしいが、コメント欄としてみれるのは初らしい。
先程のスパチャは魔法のようなもので、金額=魔力量と考えていいらしい。
その魔法のスパチャを使い手助けをすれば、悪用しようとする妖精もいるとのこと。
「ま、ファンとアンチみたいなもんか」
:そゆことー
:ちなお前を見てるリスナー(奏民)はアンチが多いよw
:安心しろ、7割アンチで10割ファンだから
:視聴者数多くなればもっと面白くなるのにーww
「こんなつまんねぇ人間見る奴なんかそう簡単に増えるわけないだろ? ふわぁ……とりあえず眠いしもう寝るわ」
:いや、俺たちを知覚できるのがイレギュラーやでw
:奏多気づいてねぇな
:おやすみネ〜
:乙
:まぁ配信は続きますがねw
これからこいつらに四六時中監視されているという状況下で暮らしていくとなると、なかなか憂鬱だ。だがまぁ数もそんないないし、ガチのアンチっぽくもないし大丈夫だろ!
――そう楽観的に思っていたのが間違いであった。
この時の俺は知らなかったのだ。妖精界隈にも独自のネットワークがあり、〝バズり〟も〝炎上〟もあるということに……。
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