第182話

一弥も事務所で、謹慎までには至らなかったが、厳重注意を受けていた。



夜、二人は華井の兄が経営するカフェで落ち合い、今後のことについて話し合った。 



「……ごめん星來。僕のせいで謹慎扱いさせちゃって。」      

 

「ううん。こっちこそ。一弥にはずっと迷惑かけっぱなしだもん。」



一弥は目の前に座る星來を前にうなだれた。



「それでね、しばらくは大学でも距離を置いたほうがいいと思うの。これからツアーが始まるんでしょ?ちょうどいい機会だし。」


「…………」

  


星來との大事な接点ともいえる同級生という肩書。せっかく同じ大学に入学したというのに、結局こんな形になってしまったことが悔やまれるばかりだ。



一弥も、今回ばかりは星來の意見に同意だった。



自分が無理に隣の観覧席まで引っ張っていったのだ。それなのに世間から非難されているのは星來の方。星來が理不尽な目を向けられるのは耐え難いものがある。



しかし。距離を置くのが辛いのも確かだ。 



「星來。このまま僕たち、会わないまま終わるの?」


「……大学の、卒業式があるじゃない。」


「それで卒業したら、本当に何もなくなる……。」



接点が、ただ芸能人同士というだけになってしまう。




親友であれ番犬であれ、この先の自分との約束がほしいのだろう。一弥がそれを求めていることは、星來にも手に取るように分かっていた。 


 

だからここで終わらせなければ、この先一生彼を縛ってしまうのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る