第160話

「え?まさか朱朗、NTR寝取りしちゃった?!」



青司に話があると、青司のマンションに呼び出されていた朱朗。未遂NTRから1週間後のことだった。



大人で心優しい兄からの第一声がそれだった。



「ローマ字3文字って便利。全然罪に聞こえない。」


「どったのあろくん。罪の味に噛みしめちゃ網走刑務所行きだよ?」



青司は、朱朗の覇気のなさと顔色の悪さを見て、適当に言っただけなのだが。どうやらローマ字3文字は冗談では済まされないらしい。



「……おれ、さいてーだわ。」


「うん。ようやく自覚してくれてお兄さん嬉しいよ。」



リビングの椅子に座る朱朗。青司に出された蛸せんべいを前に大きくため息をつく。



青司はそれを上回る息を吐いて、コーヒーのカップに手をつけた。目だけは嫌味たらしく朱朗に向けたまま。



朱朗がそんな青司に、いい加減腹を割ろうといやいや視線を合わせる。



「……あのさあ。なんで星來を抱いたなんて嘘ついたの?」  


「え?僕は星來ちゃんを抱いたなんて一言も言ってないよ?」


「…………は。」


「春風を好きになってから一人だけ抱いたって言っただけで。」


「…………」



してやられた?いやその前から星來は自分に、青司に抱かれたと言っていた。その嘘を全部本気にした俺が悪いとでも?



じゃあどうするのが正解だったのか。

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