第64話

本日の収録である教育番組『十代の恋バナ論』。赤いランプが点灯する収録中のスタジオ。



星來は等身大の自分で、現役女子高生相手に恋愛論を唱える。



『わたし、中学の時からずっと片思いしてて、もうかれこれ4年になるんですよー。』


「え!4年も?!あなたのそのひたむきさ、とっても尊敬する!」


『え?!ほんとですか?!』


「うん、だって同じ人を4年も一途に想い続けるって、なかなかできないことだと思うよ?」


『うわあ、星來ちゃんに尊敬されるなんて夢みたい!』


 

10人ほどの女子高生相手に繰り広げられる恋愛相談。椅子に座り、10対1で対面して。撮れ高があるのかないのか分からない撮影現場に、ひたすらゆるい時間が流れていく。



コミュニケーションとは、相手を尊重することから始まるのだ。さっき実来から教わったばかりのコミュ力を早くも自分のものにしていた。



「でもきっと両思いになれたとしても、すぐに信頼関係が築けるわけじゃないから。信頼関係が築けて初めて、愛に変わるんだろうね。」

 

『さっすが星來ちゃん!深いなあ〜。』


「恋って悩んだり不安になったりするうちが恋だと思うから、片思いって凄く素敵な恋だといえると思うの。」


『なんか、片思いなのに自信が持ててきました!』

 


人の言葉は自分の大事なネタ。星來は、相談者である女子高生に尊敬の眼差しを向けられ、片思いのエキスパートになれそうな気がした。

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