第45話

『淡色と常套句』の撮影から、学業に専念していた二人。



学歴も、将来芸能界でやっていけなくなった時の保険になる。それなりに名門校のネームバリューを利用していきたいよね。と小さい頃から話していた二人は、名門大学である嘴開はしびろ大学に入学した。



その学歴の高さを誇るネームバリューにより、世間のイメージも上がるはずだった。



上がるはずだったのだが。





京香きょうか、男に振られたんだってさ。」

「そうなの朱朗くん。京香ねー浮気されちゃって。今傷心なのー」



「えー京香ちゃんがあ?そんな可愛いのに浮気した男許せんな。まだ冴子さえこが浮気されんならわかるけど。」

 


「なにそれひどくない?!」


 

「なーに言ってんの。お前みたいな尻軽ビッチな女は、誰が浮気で誰が本命かもわかんねー癖に。」



「はあ?アローにだけは言われたくない!」


 

「俺には本命ちゃんがおりますんで。」




「あは。安定の一途で本命ちゃんうらやま〜」

「えー朱朗くんて意外と純なんだあ」



 

21歳、大学3年生になった朱朗。



大学のテラスで二人のロングネイルを施すギャルを前に、タバコをふかす。指で挟むその姿は、オーバーサイズのシャツにベスト、ゆるめのスラックスを履き洗練された印象で。



右目元のほくろは幼い頃から変わらず色気をつくり、マロンクリームの髪色がゆるりと毛先を遊ばせている。

 


尻軽ビッチな冴子はハイライトを入れたパーマで、最近浮気されたらしい京香はピンクベージュのボブスタイル。どちらも露出がまぶしくて激しい。




脚を組みかえた朱朗は、



「(そのネイルで背中擦られるのはないわあ。正常位断固反対。)」



と思いながらも、テーブルに肘をつき、二人のギャルにあどけなさの残る笑顔を放つ。



「冴子も京香ちゃんも、可愛くて困る〜」



肘を外し、再びタバコの煙を吐き出す朱朗。さきほどまでのあどけなさとは逆に、口角を上げほくそ笑む。



二人のギャルが、妖艶さを漂わせる朱朗の姿に目を奪われて。コンビニで買ったカフェのカップから唇をつけたまま、飲めずに停止する。



「ん?可愛くてごめん。とか言ってくんないの?」



朱朗が二人に向かって煙を吹く。


 

残暑が残る仲春。パラソルがつくる影が3人を呑み込んでいった。

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