第41話

星來が一弥とのデートを明かせば、朱朗は無意識に星來の肩をつかみ、再びその唇に噛みつく。



「…―――ッ」

 


それはもう、息などさせてもらえないほどの荒々しいキスで。



初夏の湿気を含む吐息が、二人の零距離に立ち込める。



「(デート?デートどころか下着?下着を買いに行った?!あの無表情アイドルとッ?!)」



一弥はその頃、RainLADYの笑わないアイドルとして活躍しており、RainLADYは今やアイドルの頂点に君臨していた。



星來は血迷う朱朗に恐怖を覚え、突き放そうとするが朱朗の力には敵わず。


 

「やめ、っやだ、あろ、」

「せーら、」



朱朗は興奮を抑えきれず、星來の胸をわしづかみにする。



「(ひぃッ)」



血の気が引いた星來は、ブランコの遠心力を使い、朱朗の膝に思い切り蹴りを入れた。



「ッ―――――か、神谷活心流、ひ膝ひじきっ」



膝を抑えうずくまる朱朗の後ろには、今にも鉄槌を下しそうな二人のマネージャーが立っていた。



星來のマネージャーは靴を手に、朱朗のマネージャーはビール瓶を手にして。





カメラマンは無事、ハグする二人をカメラに収めたのだが……。



朱朗が後からマネージャーにこっぴどく怒られたのは言うまでもなかった。ディープなキスシーンを映画関係者と『サテライト』関係者にも見られてしまったのだから。



しかし朱朗のマネージャーは、今後さらに頭を悩まされることとなる。



ヤラセゲリラ撮影から2週間、早くも『サテライト』には二人の密会スクープがトップ記事として飾られた。



初々しいハグではなく、本物の恋人のように抱き合う……いや、なんとなく違和感を感じるハグシーン。



SNSではこう呟かれた。



『何かがおかしい』『星來ひき気味』『#映画化発表目前』



世間には、ある程度ヤラセを見破られていたのかもしれない。

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