第6話

先手、朋政朱朗ともまさあろう

 


 

例えば共演者である主役の女優。



一見清純なイメージだが、芸人とのやり取りもそつなくこなし、なんなら下世話な話題にも機転を利かせ綺麗な対応ができる国民的ヒロイン。



今や若い世代が好き好む恋愛映画やドラマにはひっぱりだこ。そこまでのし上がったのは彼女の高度な演技力と雄弁さゆえ。



「ないない。演技力高いのと口が上手いのはスパイくらいだよ。スパイアニメで学んだもん。」



朋政朱朗7歳は達観しているものの、発想は子供らしいから大人もホっと胸を撫で下ろすような子役だった。



「彼女は元々貧乏で、お金欲しさにキャバクラに勤めて何年かして、有名自動車メーカーの会長に愛人として見初められて、見た目の良さと本人の芸能界への関心からメーカーの広告塔として起用されたんだ。」



そこから彼女の芸能界への道は開けたと、そういうことだろうか。

 


それで?つまり朱朗は何が言いたいのか。



「イメージも過去もいくらでも作り替えられるってこと。」



そんなの今さらですよ朱朗くん。芸能界なんて視聴者に夢を与えるお仕事ですから。



「分かってないなあ。つまり、彼女のシンデレラストーリーはSNSで話題性を集めるために作られたもので、本当は彼女は自動車メーカーの会長の孫ってこと。それだけテレビ番組にスポンサーとして出資してるメーカーだから、プロデューサーも会長の希望とあれば主役に起用せざるをえないよね。」



小学2年生の朱朗は、目の前に座る同じく小学2年生の星來とマイクラのクリエイティブモードで監獄をつくりながら言う。 



「スカウト?シンデレラストーリー?そんなのないない!芸能界は金金!世の中どこも一緒で金が第一!」

  


そう豪語する朱朗の言葉は、全て兄の受け売りだったりする。 



なにせ朋政家は三人兄弟で、三人とも赤ん坊の頃から芸能事務所に入れられ、登録料、レッスン費、撮影代、懇親会費などを親が支払ってきている。



年間にすれば数百万円の投資。OLの年収に匹敵する。



兄弟いずれかでも芽が出なければ、芸能事務所の評判は落ちてしまうというもの。



三人兄弟の中でも俳優としていち早く芽が出たのが三男、朱朗であった。

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