第1話

21歳本業クズ俳優と、21歳本業清純を振りまく女優の会話。

 


「この細腕をつかまえて」


「やめてってば」


「この細腰を抱き寄せたら」


「やめてってば」

 

「あら不思議。Shall weダンス?」


「春らしからぬクズでNOと言える大人になりたい。」


「今日から春の季語にクズ導入したら昔の俳人追い抜ける自信しかないわ俺。」


朱朗あろうがこんな21歳になるなんて誰が予想したの?」


「おん?予想の範疇外だから俺の人生なんじゃん?」


「この範疇外」


「クズを範疇外っていう女、星來せいら様だけ。」


 

「やっぱ俺たち、良好ね。」と、告白にも満たない台詞で酔わせつつ、ふかした笑みを携え彼が半分も吸っていないタバコを彼女に咥えさせる。



すると彼女がふぅっと、右唇に咥えるタバコとは反対の唇の隙間からけむりを立てる。絶妙に開いた唇から放たれる白くて苦いそれが、彼の恋情を翻弄する。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る