2章23話「影に潜む脅威」
彩菜の一撃で大型ゾンビは倒れたものの、ゾンビの群れは一向に減る気配を見せなかった。あの大型ゾンビ以外にも、群れを支配する存在がいる――その事実が彩菜たちの脳裏をよぎった。そこで、いったん一同は距離を置くことにし、作戦を立てるべく合流することにした。
「ひとまず、皆で集まろう!」と彩菜が声をかけ、ミナもそれに頷いた。
ミナと彩菜が急いで我如古とおばぁの元へ駆け寄り、互いに援護しながら徐々にゾンビの群れから離れていく。安全な距離まで退避し、しばらく進むと、ゾンビの追撃もなくなったことに安堵した一行は、その場にバタリと腰を下ろした。
「はぁ…」彩菜もミナも、肩で息をしながら互いの無事を確認するように顔を見合わせた。
息を整えたミナが口を開き、彩菜に向かって「ありがとう、さっきは助かったわ」と感謝の意を伝えた。ゾンビに襲われそうになったところを間一髪で加護をかけられたことを心から礼を述べていた。
彩菜もミナの不意打ちでゾンビを一掃したことに感謝しつつ、我如古に視線を送り、宜野湾シティで施設警備をしていた我如古をミナに紹介した。「ミナさん、彼が我如古さんです。頼りになる人ですよ」彩菜の言葉に、ミナも小さく頷き挨拶を返した。
しばらくして、ようやく皆が落ち着きを取り戻したところで、彩菜たちはゾンビの種類やこれまでに知った情報を共有し合うことにした。
まず、我如古の無謀な突撃について彩菜が問い詰める。「ちょっと!さっきの突撃、勝算があったんですか?」と彩菜が強めの口調で詰め寄ると、我如古は苦笑しながら、少し涙目で肩をすくめた。
「いや、その…勢いで、つい…」と我如古が言い訳を口にしようとするのを、おばぁが止めた。「まぁまぁ、我如古の突撃は置いておいて…今はミナさんの話を聞こう」と彩菜をなだめる。
するとミナが、ゾンビや怨霊について知っていることを話し始めた。
ミナの語るゾンビの種類
「ゾンビには大きく3つのタイプがあるの。まず1つ目は、一般的なゾンビ。これは映画でよく見るのと同じ、噛まれたり引っ掻かれたりすると感染するタイプね」とミナが説明すると、我如古が顔をしかめた。
「なるほど…そりゃ危険だな」と呟くと、ミナは頷いて続けた。
「2つ目は『怨霊憑依型』よ。これは見た目は人間と変わらないけれど、実は怨霊が憑依していて、体を操っているの。こういうタイプは感染はしないけど、逃げる人の邪魔をしたり、他の怨霊を引き寄せたりして、じわじわと人間の抵抗を削いでいくのが特徴ね」
怨霊に取り憑かれたゾンビの話に、彩菜たちは顔を見合わせ、不気味な感覚に襲われた。
「そして、3つ目が『特異型』よ。これは、大型ゾンビのように通常のゾンビから何かしら変異して、異様な力を持つようになったもの。どれも厄介な存在だけれど、このタイプは特に油断できないわ」ミナの話に、一同は深く頷いた。
ミナの語るグールの存在
ミナは続けて「そして、グールの話だけど…」と語り始めた。
「グールは北谷に現れた特異な存在。ある霊媒師が怨霊に襲われ、憑依されたまま特異型ゾンビに襲われた結果、体内で怨霊と特異型の力が融合し始めてしまったの。こうして進化を続け、ゾンビを支配する力を得るに至ったわ」
我如古が「そりゃまさに怪物じゃないか!」と驚愕の声を上げると、ミナは悲しそうに視線を落とした。
「…その霊媒師は私の師匠だったの。でも、私はあの時…何もできなかった。ただ逃げるしかなかった…」と静かに涙を浮かべたミナの表情に、彩菜たちは言葉を失った。
ミナの語る怨霊・恭子の過去
ミナは涙を拭い、彩菜の方を向きながら最後の話を始めた。「もうひとつ、これは個人的なことだけど、恭子という怨霊がいるの」
「恭子…?」彩菜が首をかしげると、ミナは頷き、少し緊張した面持ちで語り出した。
「戦前の人物で、怨霊憑依型の一種。彼女が怨霊となり、私の家族を壊していった。妹も、恋人も…皆を失ったわ。師匠まで奪われて、私の人生は真っ暗だった」
ミナの言葉に、一同は深く息を呑んだ。彼女の復讐の決意がその言葉の中に宿っているのを感じ取ることができた。
「私はその恭子を止めるため、霊媒師としての力を磨き続けてきた。今回、皆さんと会ったのも何かの縁だと思う」と語るミナの言葉には、強い覚悟が宿っていた。
ミナの話を聞いた彩菜たちは、未知の脅威に対処するための覚悟を新たにした。ゾンビの種類や怨霊、そしてグールや恭子の存在…情報が多すぎて一度には消化しきれないが、それでも今後の戦いに向けて、彼らは知識と力を合わせていく必要がある。
我如古が大きく息をつき、「さぁ…どう動くか考えなきゃならねぇな」と真剣な表情で言うと、おばぁが静かに頷き、「焦らず、しかし油断せず、進んでいこう」と語った。
こうして、一同は新たな決意とともに、今後の方針についての話し合いを始めた。
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