第143話

『 じゃあ、今日は何を渡せばよかったの? 』



あまりに笑いすぎて、ちょっと可哀想になる。

それでもニヤつきが止まらない。



「 バレンタインって聞いたことない? 」



僕がそう言うと、さらに怒った顔をする君。


そうだよね。

無頓着すぎる君ですら、

さすがにバレンタインデーは知っているよね。笑



「 今日はそのバレンタイン。

ユウミからチョコを貰えるかもしれないって

楽しみにしてたんだけどな。 」



一瞬、驚いた顔をした君。



『 ごめん。チョコ、ない。 』



「 でしょうね。 」



想像通りの答えに

僕はやっぱり笑ってしまった。


そんな僕を見て、顔を真っ赤にする君。


まるでお留守番をしている小さな子供のような。

主人を待っている子犬のような。

そんな弱くて愛おしい君の姿を目の当たりにして

胸の奥がぎゅっと締め付けられる。


確かにいじめたのは僕だけど。

何だか申し訳ない気持ちになる。

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