第132話
また不毛なことを考えていたところで
乾燥機が終了の音を鳴らした。
2人で洗濯物を畳む。
「 それで、タイムリミットって何?
なんか深刻なこと? 」
初対面にしてはじゅうぶんに接点はもてたが、
もう少しだけ君に深く踏み込んでおきたい。
なぜなら、僕たちには時間がないからだ。
『 家の事情でもうすぐ帰らなきゃならないの。
会ったこともない知らない人と結婚して、
一生、退屈でつまらない檻の中に入るの。 』
"政略結婚"
君もまだ会ったことがないであろう相手に
もうすでに嫉妬してしまう。
会う前から君が退屈でつまらないと思う相手に
君を譲るつもりはない。
「 何それ。それは想像の話?それとも実話?
あ!次の小説の企画とか? 」
ひとまず嫉妬心を抑えて、冗談ぽく返した。
そんな僕を、君は見つめた。
とても真剣に。
"私には、本当にタイムリミットがある。"
そんな思いが瞳に詰め込まれていた。
「 結婚って、、親が決めた人と?
ユウミは恋愛もしたことないんだよね?
そんなんで良いの?
逃げ出したいとか思わないの? 」
逃げたいと言ってくれ。
そしたら僕は、何だってする。
『 今までの人生で、逃げ出せた試しがない。
それに、あと1ヶ月ちょっとしかないのに
恋人ができるわけでもないでしょ?
できたところで、すぐにサヨナラだし。
せめて、小説で大当たりしないかなって
僅かな希望を持って今も書いてるけれど、
見様見真似で書いている恋愛小説だから
リアルな恋にはやっぱり敵わなくて。
あの4コマ小説の読者は全然いないと思うよ。 』
逃げ出せない?
だったら僕が君を連れ去るよ。
1ヶ月で恋人ができない?
そんなの簡単だ。
僕が君の恋人になるよ。
すぐにサヨナラ?
そんなことさせない。
捕まえたらもう離さない。
どれだけ君に会いたかったか。
やっと会えたんだ。
一生、離すつもりはないよ。
退屈でつまらない檻の中よりマシでしょ?
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