第101話
『 ユウミ、おかえりなさい。
みんなで心配してたから良かった。
小説家なんて突拍子もないこと言うから。 』
夕食の席で父親が言う。
びっくりしたのは、激務で多忙なはず兄が
その席にいたことだ。
『 体調はどう?ユウが働いてた薬局には
連絡を入れておいた。
もともと1年の予定だったから辞めることは
快く承諾してくれたよ。 』
兄が言う。
そもそも薬局のパートも兄の紹介だ。
もうその時点で私は駄目な大人だ。
紹介を何も思わず受け入れていた私には
自立なんて程遠いものだったし、
自分に苛立ちしかない。
自分が"不自由"の中心にいることに
今さら気づいた。
こんなに優しい家族を窮屈だと思っている。
でも、自分一人では何も出来ない。
「 お兄ちゃん、ありがとう。 」
『 ユウは気にしなくていいよ。
それより、お見合いするんだって?
いいの?また無理矢理なんじゃない? 』
兄が茶化しながら、優しく笑う。
お兄ちゃんはいつだってかっこいい。
出来が良くて寛大で、私とは大違いだ。
「 無理矢理じゃない。私が早めたし。
それに、どうせいつか結婚するんだったら
早い方がいいって思ったの。 」
『 そっか。あんなに嫌がってたのに
何か急に寂しくなってきたよ。 』
困ったような顔で笑う兄。
『 そのことなんだけど。
ユウミが辛くならないか、少し心配なんだ。
本当に進めてもいいんだな? 』
『 あなた。今さら何を言うんですか。
そもそも私たちが承諾したことなんだから
ユウミが幸せになるって信じてあげないと
ユウミ自身が不安になるでしょう。 』
そうだね、って切ない顔で笑う父親。
私の周りでは、いつもみんな気を遣っていて
みんな切ない顔で笑う。
・・・
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