第99話
実家に帰るべく、駅まで歩く。
赤信号の横断歩道で立ち止まる。
見覚えのある車が通り過ぎる。
「 リョウ、ジ。 」
運転しているのは、よく見慣れた人。
たった1週間ほど前まで一緒にいた人。
それなのに、全く知らない人のように感じる。
だって、横に乗せた少し歳上に見える可愛い
女の人に、とっても優しい顔で微笑んでるから。
私といたときのような、切ない笑顔なんかじゃ
ない。
「 そっか。あの人が戻ってきたんだ。 」
妙に納得した。
ずっと好きだった人が、戻ってきたんだ。
リョウジのもとに。
・・・
だから私は振られたんだ。
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