第90話

「 茶番ってなに?どういうこと? 」



意味が分からず、精一杯、何ともないフリを

して聞き返す。



『 だから、こんな恋愛ごっこ。

駆け落ちとかで盛り上がるの、やめよう?

良い大人なんだし。 』



リョウジが冷たく笑う。



「 急にどうして? 」



『 急じゃないでしょ。

ユウミにはタイムリミットがあるから

僕にしてみれば、都合が良かった。

最初にここで会った日に言った通りで、

ユウミにも事情があったのと同じように

僕にも事情があった。

要するに、利害関係が一致した。

だから、ユウミと付き合ったんだよ。 』



何も言わない私に、リョウジは続ける。



『 それに、こんなことしてても解決しない。

お互い自分の運命に向き合うべきだ。 』



リョウジが言っている言葉自体は冷たいけど

口調はいつもと変わらず優しい。


どうして?

そんなに酷いことを言うのであれば、

いっそ、突き放してよ。

運命ってなに?

何の運命?


結局、最後まで核心は言わないのね。


・・・


リョウジは残酷だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る