第17話

カツアゲ現場を素通りした私は、カツアゲされている生徒になぜか助けを求められてしまった。


 「一門君!助けて!僕は知っているんだよ、君が密かにムエタイやってるのを!」とカツアゲされている生徒に言われてしまえば、当然琉生は私に興味を持つわけで.....。



「はあ?こんなナヨっちい男がムエタイだあ?つかなんだよムエタイって。タイ人かお前。」



 何でよ、なぜ私を引き留める?おかしいでしょ。心陽君の出番でしょ?!


 思えば秋人と出会った頃から漫画とは展開がずれつつあったのだ。秋人の時も琉生の時も、まだ心陽君が入学してくる前の話だったのだから。



「ちょ、ちょっと健康のためにムエタイ習ってて....ほら、長寿の秘訣みたいな...。」


「ジジイかお前。てか一門ってどこのお坊っちゃんだあ?名前だけは金持ちそうだよなあ?」



 なんて私が絡まれている間にも、カツアゲされていた彼はスタコラ逃げて行ってしまったわけで。



「まあいい、お前、三万ぐらい持ってんだろ?とっとと出せや。」


「え、ええーと...」



 ここで断れば確実にトイレで服を脱がされてしまう。だから私は財布を取り出し、中身を全開にして琉生に見せた。



「ご、ごめん...。僕今、63円しか持ってないや...。」


「.....はああ"あ"あ"?!?」



 63円によく分からないキレ方をする琉生。私は一気に青ざめ、その場から動けなくなってしまった。



 ヤバい、この展開はヤバすぎるっ、これはもう処女どころか色々なものを失くしてしまう。男子トイレで犯される女子なんて、恐らく男性向けエロ漫画にしかない展開だ。多分これがあれだ、肉◯器ってやつだ。そう腹を括ったのに......



 なんと琉生は、力任せに私の頬を殴ってきたのだ!!



バキィィぃぃぃッッッ



 うっそーーーーーーー


 なんでーーーっ?私、男子トイレに連れ込まれるんじゃないの??!心陽君は男子トイレに連れ込まれるのに、何で私は殴られるの?!?ちょっとばかし理不尽じゃない~??



 私はその理不尽さにぶちギレて、力任せに琉生の顔面に膝蹴り、からの頭にかかと落としをきめた。

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