第6話

わたしはこの時知らなかったんだ。



この世には、悪意のある優しさがあるということを。



それを教えてくれたのはアルバイト先でお世話になっている6才年上の先輩。


大人で、落ち着いていて、穏やかで、凛とした強さがあるとても綺麗な人。



わたしもなれるかな。


なれたらいいな。



自らの辛い過去を、そして、また傷付ついてしまうかも知れない事を厭わずに、わたしの為に全てを打ち明けてくれた飛鳥さん。


そして全てを知ったあの日、見ず知らずの他人であるわたしを抱き締めてくれた、その友人である葉月さん。




6年後の自分はどうなってるかと想像してみる。




でも、ダメ。今のままじゃ何も。



変えなきゃ。


このままじゃ何も始まらない。



──そう思って、

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