第5話

「くるみ」


「……志季しきさん、なんですか?」


「キスしよっか」


「えっ…」


「するの初めて?」


「……は、はい」


「じゃあ、ゆっくり慣れよう」




初めて志季さんの車に乗った日。


触れるだけのキスをした。


それ以上は触れようとしない優しいその人は、何もかも初めてだったわたしのペースに合わせてくれる。




ファーストキスは少し苦い煙草の味。




「くるみカワイイ」




二回目は、少しだけ大人のキス。




きっとわたしはこの出来事を一生忘れない。




……─どんなに忘れたくても。

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