最強の鉄拳でお前をぶち破る!

シャチマくん

第一巻

序章「ようこそ異能ヶ嶺学園へ」

第1話「俺に与えられた異能力」

 それはアメリカの首都で確認された四歳の男の子が始まりだった。それもいきなり掌から光を放ったと言う話題で世界中が持ち切りになり、それから次々と同じような事態が発生し始める。それが世界中で起きたことをきっかけにそれらを発現させた人間の持つ力を【異能力】と呼称した。日本でも同様なことが発生した時から研究員による研究が行われるようになった。それから五十年後には世界総人口のおよそ四割の人間に【異能力】が発現したニュースが話題を呼んだ。そして世界的に研究の成果が発表された瞬間にこれらは人間が進化を遂げた証であると研究者たちは公表したのである。さはに【異能力】はそれぞれ個人によって種類が異なって来ることが分かった。しかし、それからしばらくが経つういにそれらの事実が変わって行く事態が起きる。それは世界総人口のおよそ六割が【異能力】を発現させる規模になった時に研究者が気付いた説が有名だった。異なった【異能力】を持った両親が産んだ子供には、どちらかしか発現しないと言う法則が存在することだ。つまり片方の【異能力】しか遺伝しないと言った結果が判明したのである。それによってより強い【異能力】を残したいと願った夫婦の多くは、望んだ遺伝をする確率を高めるため、子供を三人以上も作るのが流行りとなった。それでも遺伝させたかったはずだった【異能力】が宿らない場合は、諦める夫婦も多く存在したと言う。そして【異能力】の発現率が九割にも上るようになった頃には、それら「有効活用するための教育機関が設立された。それも多くは犯罪に用いられる確率が上昇してしまったことで、すべての警察官に求められたのが戦闘向けの【異能力】だったのである。それによって犯罪者の抑圧にもなり、被害件数は大幅に減少した。さらに近年では【異能力】を用いた競技化と行われるようになり、選手たちの安全を考慮した上で実施するためにも、コンピュータの技術に関しても発展させて来たのである。選手の身体能力を機械に通してデータ化させた情報によって分身を作り出す技術が採用されることになったのだ。この技術はデータを基にして作られた分身を選手の意思で動かすことを可能にした上で、パソコン上の画面内で戦わせる方式である。これが可能になったことで骨が折れたり、出血する一連の出来事も再現させてよりリアルを追求した技術にもなっているのだ。こうして世界中で【異能力】を用いた競技が繰り広げられることになるのだった。


 そんな現代を生きる中学三年生の俺は黒条博斗と言う。最近になって受験を控えた俺には部活動を引退してから勉強に励む時間が増えて来た。それ以外にも俺の目指す進路先は【異能ヶ嶺学園】であり、そこは【異能力】を駆使した競技や警察官を志す生徒が大学受験を優勢に進めるために戦闘技術を学ぶ場として有名なところだ。そこでは毎年行われる【実力決闘異能演武】が人気を誇る催しになっており、一位通過の生徒には本格的に卒業後の進路で有利に立つことが出来る。そんなところを俺は目指しており、必ず学内でトップに立ちたいと思っていた。


 そんな俺が発現させた【異能力】とは【黒腕】と言って、通常の腕力よりも強く出来ている。それに刃を通さないほどの頑丈さを誇り、それで殴られた相手は相当なダメージを負うことになるのは間違いないと言われるほどだ。


「それじゃあ行って来るよ」


「行ってらっしゃい。今日も学校で頑張るのよ?」


「あぁ。分かってるよ」


 そうやって俺は朝から登校しに行く。それも手首と足首に重りを付けた状態で学校を目指すのだ。その理由も身体を鍛え上げるためだと決まっている。これから先に待ち受けているであろう【異能ヶ嶺学園】の入試の一つには実技試験もあるので、それに向けた身体作りをするのが目的だった。


 そして放課後になる。俺は今日も近所の周囲を走りに行くのであった。これは毎日欠かさずに行っているトレーニングであり、身体を鍛えるには最適な方法だと俺は思っているのだ。体力と移動速度を上げるのにはうってつけのトレーニングだと思ってやっていた。


 その後は腕立て伏せや腹筋などを鍛えるトレーニングに移る。腕や腹筋を鍛えておくことで、俺の身体はより強くなって行くばかりであった。


 俺が一通りのトレーニングを終えた後は、休憩も兼ねてお風呂に入る。やはり汗は流してからの方が勉強もやりやすいので、これだけは欠かさないようにしていることだった。その後で夕食を済ませたら、それ以降は夜の十一時になるまで勉強に励むのが日課になっている。そうやって入試に向けた取り組みは身を結ぶと信じて努力に励むことで、俺は将来に希望を持つのであった。


 そして俺がある日の放課後になった時のことだ。そこで俺と同じ進路を希望している女子が尋ねて来た。何の用事があって俺に声を掛けたのかは話を聞いてみれば分かることである。彼女が話すことによると、一緒に実技試験に向けた取り組みをしたいと言うので、俺がいつもトレーニングに励んでいるのだと告げると、それでも構わないので自分も同じようにしたいと言って来るのだった。それを俺は了解することによって、彼女と帰り道を共にしてトレーニングを始める。


「ごめんね? 何だか私の知らないところで博斗くんはトレーニングなんてしていたとは思わなかったよ。そうやって身体能力の向上に励む人たちがいるなら、きっと何もしないでいた私では合格なんて無理だったかも知れない。だから、博斗くんを尋ねてよかった」


 そんな風に光凪輝菜子は俺の取り組みを知れたことで、実技試験に対する不安が解消できたかも知れないと言う。輝菜子が言うことによると、これまで勉強以外に励んで来た取り組みがなかったらしく、それが早めに知れたところが幸いだったと告げた。しかし、彼女の【異能力】は身体が出来上がっていなくとも成立する効果を発揮させることが可能に出来るらしい。それは【ライトフォース】と呼称される【異能力】で、光を吸収することによって身体機能を底上げさせる効果を発揮できるみたいだ。これは太陽の光が大きく強化させるのにうってつけのエネルギー源になっていた。それに身体機能が上乗せすることで、さらなるパワーアップが期待できる。


「それじゃあ早速ランニングから始めよう。俺がいつも走っているコースを通って行くから、それに付いて来な?」


「うん! 分かった!」


 そうやって俺らはお馴染みのコースを走りに出掛けた。この時には輝菜子の場合だと、異能力を発揮することで、俺の速度に合わせいるみたいで、実際は輝菜子の方が早く走れていたようだ。俺も彼女が無理して合わせていないか気にしながら走るようにしているが、彼女も一生懸命なところが窺えることから、きっと速度は大して変わらないのだと判断した。そして一通り走ったら、今度はうちの庭で腕立て伏せと腹筋を鍛える。それも輝菜子は淡々とこなして行き、かなりの汗を掻いているようにも見えた。これは凄く身体にも負荷が掛かっている証拠に思えたことで、俺は少し一安心してしまうのである。


「これで今日は終わりだ。そろそろ日が暮れるし、俺が自宅まで送るから、そこまでの道案内はよろしくね?」


「ありがとう。それじゃあお言葉に甘えて送ってもらおうかな?」


 そんな風に俺たちは仲良くなった。これから先も一緒にトレーニングを続けることが決まったので、放課後になった時には一緒に鍛錬を積むのだ。


 そして俺は今日で輝菜子とトレーニングが始まって一カ月が経った。俺らも両者とも仲良く出来ているのは確かだ。それに一人で頑張るよりもこうやって二人の方が不思議と良く見えるのは気のせいだと思わされるぐらいだ。しかし、それは実際に現実であり、少しも夢ではないと思った方が良いと示されている。なので、俺はその場の状況が例えどんなに上手く行っていようとも油断は禁物なのであった。


 実技試験まで残り一週間前になる。到頭ラストスパートを迎えた俺の抱く感情には少しずつ緊張が高まって行くのだった。それも俺が鍛えて来たトレーニングなんかで実技試験が通るのかと言うところに緊張感を抱いているのだ。しかし、それが実らないことは決してないと判断する他に余地はなかった。何せ俺は全力で尽くして来たつららだからだ。


(ここで俺が通らない結果かになるのなら、これまでの努力は無駄に終わってしまう。しかし、今日に至るまで俺はしっかりと鍛えて来たのは事実だ。つまりそれだけの鍛錬は積んで来たと思っている。それは間違いだとでも言うのか?)


 もし合格できなかった時には、努力の成果が出なかったのと同じだ。しかし、しっかりと最後まで諦めない限りはきっと受かるに決まっている。それを信じないとなれば、自分を裏切ることになるのは目に見えていた。


 そんな感じで俺はギリギリまで鍛え上げる行いを通したのである。それが実るのかはこの先の試験によって決まるが、ここで落ちるような真似だけはしたくなかった。そんな意思を胸に抱きながらも、俺の気合いは十分に入れられるのだ。

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