第40話
西條さんと野口さんが、自然を装う足取りでマリア専用ハイエースの元まで歩いていく。コキンちゃんに話かけにいったはずの二人は、すぐに課長と課長代理に捕まっていた。
ああみえて西城さんは中学から付き合っている彼女持ち。13歳から付き合っているらしい。でも今は遠恋中。
野口さんも確か……彼女がいたはずだ。彼女と一緒の時は、極力「カ行」は喋らないと言っていたし。「家庭」「既婚」「苦行」「結婚」「婚姻」のワードを出さないために。
二人とも典型的な自由人、飲み会は3次会まで行くタイプだ。
コキンちゃんは、マリア先輩の後をちょこちょことついて行っている。ちょっとだけジェラシー。無能なマリア先輩は、私の教育係だったのだ。
女子校みたいな嫉妬を頭の中で繰り広げていれば、女子力高めなフィガロが駐車場に入ってきた。
白とエメグリのミルキー色。私に女子力はなくとも、「あの車可愛いじゃない」という思考は持ち合わせている。
まだまだ空きの多い駐車場。にも関わらず、一番奥の遠い場所に停まったフィガロ。
カップルかな、と遠目で見ていれば、中からは黒髪の、黒いTシャツに黒いチノパンを着たメガネの男が現れた。
私のレーダーがすかさず彼をロックオンする。アイツだ。社内報に載っていた販売士試験満点の男。
身長は高そうだが、私に負けず劣らずの地味な雰囲気で、味噌汁は小ネギだけでも十分味噌汁だと言いそうな青年だ。どう見ても名前負けしている。
コキンちゃんにはジェラシー、黒いメガネ男にはライバル意識。
私の脳内も、大概朝からハジケている。
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