第35話

社会人としての疲れが滲み出ている、旭陽の手。物流部という過酷な現場で作られた、血管が浮き出る手の甲。つい何度もチラ見してしまう。

   

 

お姉ちゃんがいる時に頼んだはずのココアは、まだ最後まで飲みきれていない。糖分を摂取するよりも、もっとずっと気になっていることがあるから。



「旭陽。今、彼女とか、いるの?」



一瞬、喉がつかえてしまった。でも甘咬みはしてないから不自然ではないよね。



「いや。いないけど。」 



あ。 



なんで私、――――処女を取っておかなかったんだろう。



 

 

『後悔しても、無駄なんで。』  

   


キラ君の嫌味な声が響いてきそうで、いやだ。処女を捧げたどうでもいい男のことなんて、思い出したくもない。



心と身体は比例しないように、恋とセックスも反比例だという仮説が誕生する。 

  


私の思考、チャラいな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る