14.
正確には指先を遠慮がちに掴んでいるような形であったが、驚くには十分なものだった。
「え、大河、急にどうしたの」
さらに戸惑いを隠せないでいる姫宮のことを今度は引っ張り、行くことを促していた。
「ま、待って、そんなにも引っ張ったら、一緒に転んじゃう」
大河に促され、屈んだままという不安定な体勢で転びそうになりながら歩いていると、「本当に母親のことが大好きだな」と彼なりの微笑ましげに見つめていた。
そして、今度は御月堂が姫宮達が転ばぬよう見守る中、ようやく雪だるまのところへ着いた時、大河の方から手を離し、持っていた枝を早速差していた。
すぐに離されてしまったことは寂しいと思ったが、雪だるまを見た時、その気持ちは消え去った。
人でいうところの首辺りに見覚えのあるマフラーが巻かれていたのだ。
「⋯⋯あれ、このマフラー、私の⋯⋯?」
「そのマフラー、姫宮さまのだったのですねー」
「⋯⋯え?」
この声は小口のはず。
けれども、姿が見えない。
御月堂も同じように驚いた顔をしているのが合い、それから辺りを見回していると、大河が雪だるまの隣にある雪の塊に指を差していた。
そこに? と恐る恐る歩を進めていると、中から小口が出てきた。
「え、小口さん、何をしているのですか? というよりいたのですね」
「いやぁ〜なかなか戻ってこないので、どうしたのかと捜していましたら、イチャイチャしていたようなので邪魔しちゃいけないなと思って、かまくら作って待ってました」
「⋯⋯っ!」
マフラーはその時、その辺で落ちていたのを拾って巻いてあげたんですよと言っている時は、もうすでに姫宮の耳には入ってこなかった。
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