13.
大河がそうしたまま動かない。だから、御月堂も何も言わず見ていると、やがて首を横に振った。
それもこれ以上ないぐらいに大きく。
「やはり、そうだな。母親がやってきたこととはいえ、そこまでのことはしたくないということだな。試すような言い方をして悪かった」
大河に向かって手を伸ばす。
恐らく頭を撫でようとしているのだろう。だが、御月堂に触れられるのも嫌がっている大河であるから、今回も例に漏れず拒むと思われる。
しかし、思っていたのとは裏腹に叩くこともなく、御月堂に撫でられていた。
御月堂も拒まれると思っていたようで、一瞬だけ手が止まったが、そのまま撫でた。
けれども、その際の手つきは普段の姫宮に触れる時と同じようにぎこちなく、それに気づいた時は、小さく笑っていた。
「さて、撫でることを許してくれた寛容な大河。まだ私に投げつけたい気持ちはあるだろうが、それよりもその枝を持って雪だるまのところへ行かねばならないのだろう」
立ち上がりながら大河に訊ねると、首を傾げていた大河がややあって頷いた。
「じゃあ、行こうか。それで、雪だるまはどこにあるんだ」
「あそこのだと思います」
指を差した先に、雪だるまとその隣に雪だるまの体部分と同じくらいの大きさの雪の塊があるが、恐らくあの雪だるまは先ほど作ったものだと思われる。
「そうか」と言って、一足先に向かおうとする御月堂の後を追うように大河が、その後ろに姫宮はついて行った。
また大河が転んでしまうかもしれないと思い、注意を払い、歩を進めようとした時、不意に大河が振り向いた。
どうしたのだろうと思ったのも束の間、こちらに手を差し出してきたのだ。
「大河?」
何かあったのかとそばに寄ると、その小さな手を促すように上下に振った。
それでも彼の言いたいことが分からず、戸惑っていると御月堂が気づいて、「どうした」と声を掛けるのと大河が姫宮の手を取ったのは同時だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます