第28話
「…朔くん。」
「なーに、百合。」
「私、怖かったよ。でも朔くんが来てくれてよかった。」
「うん。ごめんね。もう、1人になんてさせないから。」
「朔くんが、1番に思い浮かんだんだよ。」
「ご両親じゃなくて?お姉ちゃんでも、なくて、俺が?嬉しい、ありがとう。」
朔くんは俺の体を抱きしめるのをやめた。
そして首筋にくっきりと残る赤い印を、上から消すように、ぢゅっと音を立てて吸った。
その跡を見て私は愛おしいと思ってしまった。
自分でもわかっているんだ。
殺人犯を、好きになっちゃいけないってこと。
この人は、お母さんを殺そうとして、お姉ちゃんまで殺そうとして、私から、家族、という幸せを奪った人。
幸せに暮らす人達を、無差別に自分の娯楽のためだけに殺す、最低な人。
それでも
私の事を、世界一、愛してくれる人。
私の事を、すべてから守ってくれる人。
再確認した時、私の目からはまた涙があふれるように出てくる。
有り得ないと思っていた。
よくわからない屋敷に連れられて、不自由ない生活だったけど、決して自由ではない生活を強いられて。
だけどもう気づいてしまった。
もう誤魔化せないほどに気持ちが溢れてきてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます