第3話

私が中々口を開かないから、いつもは杏奈って呼ぶくせに「ご主人様」なんて呼んできた。

「なんでもない、気にしないで。」

『気にするの、杏奈は何にお悩みなんですか?』

アヤさんの煙管を口元に当てられたかと思えば、煙管に吸い込まれるように私の口から紫色の煙が溢れてきた。

「え、なにこれ…毒ガス?やだやだ、死にたくない。」

『俺が殺すわけないでしょうよ、自分だって死んじゃうのに。これは杏奈の思ってることが丸見えになるんでーす。』

煙管に吸い込まれた私の紫色の煙をアヤさんが取り込む。


「思ってること丸見えって…え?!ちょっと、待って待って!」

『待ちません、妖の力って凄いんだからな?』

ふっ、とアヤさんが煙を吐くと、紫色になった煙が宙に溶けた。





『成程、俺に恋しちゃった、と。』





呆気なく、それはそれは一瞬だった。

『顔も分からない人外に恋した自分が嫌、って…俺の事ちょっと馬鹿にしてんだろ。笑』

仮面の向こうでけたけたと笑うアヤさん。

「…好きで悪かったね、アヤさんが人間だったら良かったのに。」

アヤさんが私の気持ちをまともに受け止めてないように見えて、ひどく悲しかった。

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