12
祥子は、いつしか周囲と同じぐらいしか啓一の情報を知る事が出来なくなっていた。
雑誌でも大きく取り上げられ、放送が開始されると啓一の知名度は一気に上がっていった。
どんどん啓一が別の世界に行ってしまう感覚。
祥子の孤独は増すばかりだった。
メールを入れても、返信が無い日が続く。
そんな時に祥子はアンナの言葉を思い出す。
このままでは、私は置いていかれてしまう。
テレビの中で必死に頑張っている啓一。
啓一の一番のパートナーだと思っていた自分。
しかし啓一の夢の先には、自分はいなかった事に祥子はやっと気がついた。
歌手デビューは啓一の夢であって、祥子はその夢を応援していただけ。
一緒に走っていると思っていたのは、祥子だけだったのかもしれない。
壊れそうな思いは、祥子の心をとめどなく苦しめた。
そして祥子の心を壊す決定的な事件が起きる。
高校に入って、祥子がねだって買ったペアリング。
啓一もずっとはずす事は無かった。
しかし、テレビでオーディションの意気込みを語る啓一の指には、その指輪がはめられていなかった。
祥子は自分の指にはめられた指輪を見つめながら、心が深い闇に落ちていくのを感じた。
啓一の中に祥子はいなかった。
啓一の夢には祥子は邪魔なのかもしれない。
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