祥子はじっと自分の携帯の画面を見つめていた。




-頑張って-




そんな一言を、何度も入力しては破棄をしていた。


送信ボタンを押す事が出来なかった。




啓一にとって大切な時期。


何も出来ない自分に、祥子はふがいなさを感じていた。




祥子は自分の部屋の窓を開け、啓一の家のほうを眺めた。


しかし、祥子からは深いため息しか出てこない。




こんな時なのに、何も出来ない自分。


祥子は自分の存在を考えていた。




それと同時に、祥子の頭の中には昨日の啓一の姿が浮かぶ。


大切な人の苦悩。




それは祥子にものしかかる。


必ず訪れると根拠も無く信じていた未来が、祥子の中で霞んでいた。




祥子が時計を見ると、すでに午後2時を回っていた。


昨日は食欲が出ず、そのまま寝てしまった祥子。




さすがにお腹がすいていた。


祥子は階段を下りて、一階に向かった。




「お母さん、何か食べ物はある?」




祥子は階段を下りた所で、母親を呼んだ。




「やっと起きたの?あまりものならあるわよ」

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